『ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法』|落合陽一, 猪瀬直樹【書評】

2020年東京オリンピックの開催が決定し、多くの日本人が期待に胸を踊らせる一方で、東京オリンピックが日本の景気の最後の砦で、2020年以降二度と浮上することのない大不況に陥るのではないかと不安を感じる人も少なくないと思います。

今テレビや雑誌など各種メディアを賑わせ、若くしてこれからの時代を作る一人として間違いないと誰もが認めるメディアアーティストの落合陽一さんと、第18代東京都知事を務め日本の首都である東京から日本を動かした猪瀬直樹さんの共著である『ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法』は、先の見えない2021年以降を生き抜くためのヒントを与えてくれます。

ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法|落合陽一, 猪瀬直樹 共著

落合陽一さんと猪瀬直樹さんという異色とも思えるお二人が、日本の未来について語った一冊です。

落合陽一さんの著書をほとんど読んできた私としては、落合陽一さんの著書の中では堀江貴文さんとの共著の『10年後の仕事図鑑』と同じくらい易しく書かれており、とても読みやすく安心しました。理解するのに時間がかかる本が多い落合陽一さんですが、共著になるの易しくなるのでしょうか。

猪瀬直樹さんは、東京都知事時代はあまり注目したことがなかったのですが、本書の内容を見ると、本当に東京から日本全体をより良くしようと様々なことをしてきたことがわかり、良い意味で予想を覆された内容です。

本書の構成は、第1章では『人口・産業』、第2章では『風景』、第3章では『統治構造』、第4章では『人材』をテーマに書かれています。それぞれの章で、『これまでの時代の前提』、『2021年以降の30年間』、そして『2021年以降の大変化を生き抜くために必要な思考』について書かれており、前提知識がなくても、これまでのこと、これからのこと、これから必要なことが網羅的に書かれており、非常にわかりやすい一冊です。

気になった所をいくつかご紹介します。

5Gで起きる介護革命|落合陽一

まもなく5Gの時代がやってきて、今まで以上に高速通信が日本中で可能になります。

5Gと聞くと、自動運転が一気に普及すると考える方は多いと思いますが、落合陽一さんは介護業界にも革命が起きることを予測しています。

東京の渋谷や六本木に行けば、若者ばかりが街を練り歩き、高齢化とは無縁の日本のように思いますが、実際には全国各地で若者がいなくなり、高齢者が溢れかえっています。東京でも要介護認定された老人が施設に入ることができず、家族だけで面倒を見るために介護離職が発生したり、家庭での介護に疲れ親を殺してしまうような事件も多発しています。

AIに仕事が奪われると悲観的な人が多いことは事実ですが、そうした人たちは考えが浅はかであると言わざるを得ません。

介護現場など、労働力の確保が難しく、多くの人から敬遠しがちな仕事にテクノロジーが導入されることで、労働力不足を解消することができるという視点を持たなければなりません。

介護現場へのロボットやAIの導入の話をすると、介護をするには人間の温かみが必要で、ロボットがやるべきではないと、バカなことを言う人がいるそうですが、おじさんとロボットのどっちにトイレでお尻を拭いて欲しいかと誰もがロボットと答えるはずですし、誰もがウォシュレットを求めるはずです。

人口的な義手や義足、パワードスーツなどがどんどん一般的になり、もしかするとオリンピックとパラリンピックで、パラリンピックの方が良い記録が出ると言う未来もそう遠くないように思えます。

5Gが導入されることにより、医療現場に国境はなくなるかもしれないといいます。

落合陽一さんは、次のように述べています。

「テレプレゼンスロボティクス技術」と呼ばれる技術の進化が起きています。

ちょっとわかりにくいという人もいるかもしれませんが、例えばこんな想像をしてみてください。日本にいる名医が現地にある手術ロボットを通じて、アメリカやイギリスに住んでいる患者の手術をする。医師の動きは 5Gによって遅れることなくロボットに伝わり、手術ロボットが名医と同じように動いて、手術が終わっていく。そんな未来が待っていると言えば、具体的なイメージがわいてきませんか。

落合陽一|ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法

※画像はイメージです

現代人の心象風景は”ドラえもん”|落合陽一

落合陽一さんは、日本の20世紀後半は『ドラえもん』が象徴していると言います。もしくは、『クレヨンしんちゃん』も当てはまるかもしれません。

ドラえもんやクレヨンしんちゃんは、ある種の日本の高度経済成長の神格化された日本人の当たり前の日常、もしくは幸せの象徴として、メディアを通して日本人の脳裏に植えつけられています。

落合陽一さんは、日本の高度経済成長を次の言葉で表しています。

『ドラえもん』的な風景 =〝ドラえもん〟について本題に入る前に、僕が高度経済成長をどう考えているのかについて、3つのポイントから整理しておきたいと思います 。第1に「均一な教育」、第2に「年功序列の給与と住宅ローン」、第3に「マスメディア」です。

落合陽一|ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法

サラリーマンの息子ののび太も、店主の息子のジャイアンも、富裕層の息子のスネ夫も、みんな同じ教育を受け、画一的な人材へ育て上げられています。

高度経済成長期は、工場で真面目に働く人材や、言われたことだけをやればいいサラリーマンを量産する必要があったため、答えを覚えるだけの教育が最も効率的でしたが、今は自分で答えを作り上げる時代になりました。

ドラえもんもクレヨンしんちゃんも、共に郊外に持ち家で暮らしていますが、これは不動産会社や鉄道会社の思惑にハマり、夢のマイホームを持つことが美徳という洗脳をされ、多くの人が日本人の理想のライフスタイルはあたかもドラえもんやクレヨンしんちゃんのような家庭だと未だに信じています。

ここでもう一度、『ドラえもん』に立ち返ってみましょう。のび太の家をぱっと思い浮かべてみてください。郊外の一戸建て=マイホームに住み、父親は商社に勤めるサラリーマンで通勤していて、妻は専業主婦をやっていて、一人息子は小学生で変わらない日常が描かれる。のび太はしょっちゅうテレビに出てくるものやスネ夫の家(彼もまたメディアの影響を強く受けている)にあるものに憧れ、ドラえもんに道具を出してくれと願う。まさに高度経済成長の本質そのものではないでしょうか?

落合陽一|ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法

(写真:enchanted_fairy / Shutterstock)

高度経済成長が終わり、バブルが崩壊し、日本の失われた10年が20年になり、30年になろうとしているにも関わらず、日本人の多くが何十年も前の理想を追い求めていると考えるとゾッとします。

まとめ

落合陽一さんと猪瀬直樹さんが交互にわかりやすく、日本の過去、未来、これから必要なことを解説してくれており、日本の危機を感じると共に私たちが身につけるべき能力についても詳細に知ることができます。

普段は高度な言葉が多い落合陽一さんの思考をわかりやすく知ることができると共に、猪瀬直樹さんの作家、そして元都知事の立場からの詩的な表現や、政治的な思想はとても学びになります。

日本に生きていると何の疑問も持たないかもしれませんが、猪瀬直樹さんの作家から見た日本の風景への記述は、今までとは違った視点で日本を見るきっかけになる気がします。

人口減少、低成長、高齢化など、不安材料をあげればキリのない日本になってしまいましたが、東京オリンピックという聖典の過ぎ去った後にテクノロジーと政治が融合し、明るい日本が未来が訪れるのか、暗い底なし沼のような日本が訪れるのかはわかりませんが、一人ひとりの行動や成長が未来を変えるはずですし、本書にたくさんのヒントが隠されているように思います。

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