リーダーと聞くと、子供のころから班長や委員長、部活の部長などを任されるような、生まれつきリーダーシップを持っている人がなるものと考える人も少なくないと思います。しかし、リーダーとは誰もがなれるものであり、リーダーシップは誰もが後天的に身に付けることが出来る能力であるということを教えてくれる本をご紹介いたします。
著者の岩田松雄さんは、「ザ・ボディショップ」や「スターバックス コーヒー ジャパン」の社長を務められた日本を代表する経営者の一人ですが、多くの人が岩田松雄さんに初めて会った時は「普通のおじさん」と感想を持つようです。
本書は、「普通のおじさん」でも日本を代表する大企業のリーダーになれることを証明した本であり、誰もが後天的にリーダーになるために必要な51個の考え方を学ぶことができます。
「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方|岩田松雄
今回ご紹介する本は、「ザ・ボディショップ」や「スターバックス コーヒー ジャパン」で社長を務められた岩田松雄さんの『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』です。
本書では、多くの人が、リーダーとは生まれつき、強いリーダーシップを持ち、見事なプレゼンテーションをし、とにかくオレについてこい、というカリスマ的な雰囲気を漂わせているのが、リーダーなのではないかと感じるかもしれませんが、誰もがリーダーになる素質を持っているということを教えてくれ、読んだ人に希望を与えてくれます。
人を動かす前に、自分を動かす
リーダーのイメージは、大勢の人たちの先頭にたち、引っ張っていく人と思われがちですが、人を動かす前に行うことは、自分を動かすことです。自分は何もせず、口だけで命令するような人に、ついていきたいとは誰も思いません。最初から多くの人をまとめようと思うのではなく、自然と人が集まる自分作りが、リーダーには必要です。
私は、人を動かす前に、自分を動かす必要があると思っています。
人を治める前にまず、自分を修める必要があるのです。自分を修めることもできないのに、人を治められるはずがありません。
また、挫折経験や苦しい経験を持った人こそ、リーダーになるべきであり、失敗をしないような人はリーダーには向いていません。何故なら、リーダーになるまでに苦労した経験を持っている人は、苦しんでいる人の気持ちを理解することができ、その気持ちを理解した上で行動することが出来るからです。
綺麗ごとを並べたり、見せかけのカッコよさを求めるのではなく、自ら泥臭く動き、失敗しようと諦めずに行動し続ける気持ちが、リーダーの根底になければなりません。逆に言えば、デキが悪くても、成長が遅くても、前進を止めない人にこそ、リーダーの素質があるようです。
リーダーの様子というのは、部下から見れば相当に気になるものです。リーダーの姿勢は、組織にどんどん伝染していきます。リーダーがクヨクヨしていたら、みんながクヨクヨしてしまうのです。
だから、大事にしなければならないのは、常に「長期的には、何とかなる」と楽観的であることだと思いました。部下の前では、「一%でも可能性があるのであれば、絶対にいけるぞ。大丈夫!」という気持ちを持ち続けることです。
そしてそれを表に出していく。パッションとして示していくのです。
エレベーターで「閉まるボタン」を先に押しているか
リーダーに大切なことは、時間と効率を徹底的に意識することが出来ているかということもあります。1日が24時間なのは、大人も子供も、日本人も外国人も、新入社員から世界の大富豪まで変わりません。1秒たりとも長い人もいなければ、0.1秒すら短い人もいないのです。
リーダーという多くの人を代表する立場にいる人が、1秒を無駄にするような指示を出していたら、社員が1000人いれば、1000秒の無駄になり、1万人いれば1万秒の無駄になります。
著者の岩田松雄さんは、エレベーターに乗った時に、「行き先階ボタン」と「閉まるボタン」のうちどちらを押すかで、時間を誰だけ大切にしているかがわかると言います。
エレベーターに乗る。やるべきは、「行き先階ボタン」を押すことと、「閉まるボタン」を押すこと。
では、どちらを先に押せば効率的なのか、答えはおわかりでしょうか。
「閉まるボタン」を押してから、「行き先階ボタン」を押すことです。
こうすると、先に「行き先階ボタン」を押して、それから「閉まるボタン」を押すのよりも、〇・数秒ですが、早く扉を閉める指示を出すことができます。わずか〇・数秒、とも思いますが、これが積み重なっていくとどうなるか。〇・数秒は数秒になり、それが積み重なって数分になり、やがて何時間、何日にもなるのです。
時間と効率を意識するという基本動作があるかないかを若い頃に身につけているかどうかで、実は手にできる時間に莫大な差が生まれると言います。細かな積み重ねが、持っている時間の圧倒的な違いを生み出すのです。
普段から、同時に出来ることは同時に行い、複数のことがある時はどの順番で行うのが一番効率的かを常に考えるべきだと思います。
リーダーは、例外なく読書家である
読んでいる本の量に差はあるものの、いわゆる経営者や、起業家、リーダーと呼ばれるような人たちは、例外なく読書を日常的に行っており、読書をせずにリーダーになることはほぼ不可能なように感じます。
岩田松雄さんは、良いと思った本は、時間をおいて読み返すと言います。しかし、同じ本も、時が経ってから読み返すと響く場所が変化しており、自分の成長や今の自分に本当に必要な場所を感じることができると言います。
面白いのは、同じ本でも、読む時期によって受け止め方が変わることです。一〇年前に読んだときと、今とでは気になる箇所が変わっていたりする。
私は黄色のマーカーを引きながら読んでいきますから、「ああ、昔はこんなところに目が止まっていたのか」とわかります。それが、今とは大きく違ったりする。
これは、前に読んだときよりも、異なる見方を自分が手にできていたり、成長したりしているということでしょう。
本は作者で選べ!先端情報なら大前研一さん!
本の選び方で重要なことは、作家で選ぶということだと言います。分野ごとにその分野のスペシャリストの人の本を読んでいけば、間違った情報を得ることもなく、確実な知識を得ることができます。
例えば、先端の情報を取りに行きたいときには、マッキンゼーのコンサルタントだった大前研一さんの本はとてもわかりやすいものがあります。情報量もあるし、体系的に、極めて明快にまとめられています。
(中略)
例えば、リーダーシップのウォレン・ベニスもそうですが、「この人なら」「このテーマなら」と思った人に出会えたら、その著作をすべて読んでみる。
新刊が出たら、必ず読むようにする。そうすることで、体系的に考え方が学べると私は思っています。
もちろん同じ作家の本を読んでいると、重なる部分もある。でも、それは著者としてとても重要なことだから繰り返しているということです。何度も読めば、自然とそれが頭に焼き付けられていきます。
まとめ
リーダーシップについて書かれている本は、実際にリーダーの立場になる人や既になっている人が、如何に良いリーダーになるかということにフォーカスを当てて書かれている多いですが、本書はその一歩前の誰でもリーダーになれるし、リーダーになるべきだということについて書かれているため、非常に読みやすい本です。
また、「ザ・ボディショップ」や「スターバックス コーヒー ジャパン」の社長を務められたということもあり、非常に親近感が湧きやすく、女性にもおすすめの一冊です。
リーダーシップについては、伊賀泰代さんの『採用基準―地頭より論理的思考力より大切なもの』もオススメです。