2017年に発売され、45万部以上の大ヒットを記録した『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』の続編をご紹介いたします。
前作は国や地域、自治体というマクロな視点で予想された未来が描かれて描かれていました。
今作では少子高齢化や人口減少が私たち個人の日常生活にどのように関わってくるかという、よりミクロな視点で書かれています。
前著『未来の年表』が年代順というタテ軸を用いて俯瞰したのに対し、本書は起きる出来事を「ヨコ軸」、すなわち面としての広がりをもって眺める。
少子高齢化や人口減少で起きることを、家庭、職場、地域社会といったトピックスに分けてカタログ化すれば、さまざまなシーンを「あなた自身の問題」として具体的に置き換えることができる。そしてそれは、10年後、20年後の日本でうまく立ち回っていくための指針となる。
未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること|河合雅司
河合雅司さんの『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』は、シリーズ累計90万部を超える大ヒット『未来の年表』シリーズの第2弾です。
2021年7月時点で、『未来の年表』シリーズは、第4弾まで発売されています。
第1弾では、『人口減少カレンダー』と題して、これからの未来の日本で起きることを年表形式でわかりやすく解説してくれています。
第2弾となる本作では、さらにバージョンアップして、より身近に、個人に起きることに焦点を当て『人口減少カタログ』という形で、解説されています。
少子高齢化や人口減少が人々の暮らしにどのような形で降りかかってくるかを、あなたの生活に即しながら明らかにする。言うなれば、これからあなたに起きることを、お中元やお歳暮のギフトカタログのように一覧してみようというのだ。
本書の大きなテーマになっているのは、前作に引き続き人口減少や少子高齢化です。
日本は長らく少子化が続いており、今後子供が産むことができる女性の数がそもそも減ってしまっているのです。
政府は、出生率の改善に力を入れていますが、出生率が改善しても、そもそもの女性の数が少ないため、子供の人数はなかなか回復していかないのです。
人口減少のスピードは凄まじい。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研) の推計によれば、 2015年の国勢調査で約1億2700万人を数えた総人口は、わずか40年後には9000万人を下回り、100年も経たずして5000万人ほどに減少する。われわれは、極めて”特異な時代”を生きているのである。
国は、さまざまな過去の統計や未来予測のデータを発表しています。
しかし、そうした数字だけを見ても、実際の日常の中にどんな変化が起きるかということはイメージしにくいのが正直なところです。
本書は、国が発表しているデータをベースに、リアリティーを持って未来を想像できるように、図やイラスト、グラフなどを用いながら解説されています。
前著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』が年代順というタテ軸を用いて俯瞰したのに対し、本書は「人口減少カレンダー」で起きる出来事を「ヨコ軸」、すなわち面としての広がりをもって眺める。そうした試みによって、人口減少社会とはどんな姿なのかをより立体的に把握できると考えたからだ。
『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』の目次
第1部では、少子高齢化、人口減少で起きるであろうことを、家庭、職場、地域社会などに分けて、カタログ化されています。
20代、30代の方にもわかりやすく理解してもらえるように、『人口減少カタログ』(図表)も掲載されています。
第2部では、個人や会社などで「今からでも始められる対策」を選択肢としてメニュー化されています。
人口減少カタログ/庄子家の一日に起きたこと
第1部 人口減少カタログ
序 国民の5人に1人が、古希を超えている
- 亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる
- 東京や大阪の繁華街に、「幽霊屋敷」が出現する
- 高級タワマンが、「天空の老人ホーム」に変わる
- 80代が街を闊歩し、窓口・売り場は大混乱する
- 老後資金が貯まらず、「貧乏定年」が増大
- オフィスが高年齢化し、若手の労働意欲が下がる
- 親が亡くなると、地方銀行がなくなる
- ネット通販が普及し、商品が届かなくなる ほか
第2部 今からあなたにできること
序 「戦略的に縮む」ほど、ポジティブな考えはない
- 1人で2つ以上の仕事をこなす
- ライフプランを描く
- 年金受給開始年齢を繰り下げ、起業する
- テレワークを拡大する ほか
おわりに 「豊かな日本」を作り上げてきた”大人たち”へ
結びにかえて
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』の著者
1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授のほか、政策研究大学院大学客員研究員、産経新聞社客員論説委員、厚労省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞をはじめ受賞多数。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』『未来の年表2』(いずれも講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。
※書籍に掲載されている著者の紹介情報です。
『未来の年表』シリーズ一覧
本書『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』を皮切りに、2021年7月時点で『未来の年表』シリーズとして4冊、漫画版として1冊が発売されています。
シリーズ累計90万部を超える大ベストセラーとなり、どれもとてもおすすめです。
- 2017/6/14【第1弾】未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 発売
- 2018/5/16【第2弾】未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること 発売
- 2019/6/19【第3弾】未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること 発売
- 2019/10/17【待望の漫画化!】マンガでわかる 未来の年表 発売
- 2021/6/16【第4弾】未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 発売
人口減少カタログ
亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる
日本では「人生100年」という言葉が当たり前になり、100歳以上の人が決して珍しくない時代になりました。
しかし、人生が100年は、自分が亡くなるときに、子供たちも70代以上になっているということまでイメージできている人はどこほどいるでしょうか。
かつて、80歳で亡くなったような時代は、子供は50〜60代でまだ現役世代ということが普通でした。
今の時代は、そうではありません。
「親が100歳、子供が70代」というケースを考えれば分かりやすい。70代にもなれば、がんや心臓疾患などに倒れたとしても不思議ではないだろう。
「高齢化した高齢者」が増える社会とは、「自分が死んだら、子供に葬儀を出してもらう」という、これまでの常識が通用しない社会でもある。
こうした状況が増えていくと、子供の方が早く先立たれてしまうということも増えていき、葬儀を上げてくれる人がいないということも増えていきます。
人が亡くなって起きるのが相続問題です。
最近では親の遺産をめぐって兄弟姉妹が争う”争続”と揶揄されることもあります。
しかし、子供が1人だけということや、子供がいないということも増えています。
そうすると”争続”どころか、通常の”相続”すら発生しないということも出てきます。
“争続”の代わりに増えることが予想されるのが、相続手続きを敬遠して、相続登記を行わないということです。
現金に比べて、土地や住宅は手続きが煩雑であり、流動性が低く、現金化も容易でないことから、相続登記を行わない人が増え、「所有者不明土地」が増えることが予想されます。
総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によれば、2013年時点で全国の空き家は約820万件で、13.2%にあたります。
村総合研究所の試算では、2033年の空き家数は、2,167万戸で30.4%まで上昇することが予想されています。
全国の約3戸に1戸が空き家になるのです。
「所有者不明土地問題研究会」(顧問・加藤勝信厚生労働相)のデータによると、所有者不明の土地面積は、全国で約410万ha(㌶)になり、九州本島の約367万ha(㌶)を上回るとしています。
現在の所有者不明土地の持ち主が明らかにならない場合、2040年までに新たに310万ha(㌶)増えるとの予想もあります。
現存の約410万ha(㌶)と合わせると、なんと約720万ha(㌶)になり、北海道の約9割にも相当する広大な土地が所有者不明となります。
このまま所有者不明の土地が増えていくと、いつの間にかスズメバチの巣ができていて駆除が困難になったり、ゴミの不法投棄や雑草が増え、景観や治安の悪化にもつながっていくでしょう。
高級タワマンが「天空の老人ホーム」に変わる
不動産経済研究所のデータによれば、2017年以降に完成を予定しているタワーマンションは、全国で285棟、10万6,321戸だと言います。
このうち、首都圏が186棟、8万919戸で、全国シェアの76.1%を占めます。
住人のほとんどが事前に意識しないことが、タワーマンションは階層による”格差”が極端であるということです。
高層階に行くほど値段が高くなりがちなため、低層階にサラリーマンのほとんどが集中します。
中・高層階は、セレブや節税対策の富裕層、外国人投資家などです。
外国人投資家は、そもそも不動産が値上がりしたときに売り抜けるために購入しており、元から空き家状態にしている人も多いです。
また外国人投資家は、管理費や修繕積立金に対して無理解な人も多いため、築年数が経っているのに、十分に修繕費用が集まっていないタワーマンションもあります。
分譲マンションは、購入する人々の年齢層、家族構成、世帯年収を含めた経済環境も似たり寄ったりになりがちです。
しかし。築年数が30年以上になってくると、入居時は似ていた家庭の状況も、差がついてきます。
すると、住み替えできる経済能力がある家庭は引っ越していき、ローンを抱えた高齢者だけが残る可能性もあります。
こういう物件で住民が高齢化し始めると、エリア全体、マンション全体が急速に高齢化する。いまは憧れの的であるタワーマンションも、将来はさながら「天空の老人ホーム」のようになるところが出てくるだろう。タワーマンション全体が急速に高齢化すれば、空き家が増えるリスクも高まる。
老後の資金が貯まらず、「貧乏定年」が増大
これから日本の高齢化が進むと、高齢者の数が増えるだけではなく、貧しい高齢者が目立ってくると言います。
なぜなら、今の40代以下の世代の中には、思うように職に就けなかった人が多く含まれるからです。
低収入で年金の保険料を納めることができなかった人が多かったり、支払っていても厚生年金に加入していいないので、もらえる年金額が少ない国民年金にしか加入していなかったりした人が多いのです。
団塊ジュニア世代といえば、大学などの卒業時が、バブル経済崩壊後の「就職氷河期」と重なったため、不安定な働き方に変わった象徴的な存在でもある。インターネットや物流システムの進歩で、発展途上国の多くが日本の製造水準と遜色ない製品を作れるようになり、それを世界中に運べる時代となった。
ところが、日本企業の多くは、それら人件費の安い国々との価格競争にのめり込んでいった。この時代に新卒期を迎えた団塊ジュニア以降の世代は、そのあおりを受け、非正規雇用の「安い労働力」として追いやられていったのである。
団塊ジュニア世代以降の世代について考えてみると、年齢が上がっても親と同居する人が非常に多いことがわかります。
総務省統計研修所の「親と同居の未婚者」のデータによれば、親と同居する壮年未婚者(35〜44歳)は、2016年時点で288万人で、この世代の16.3%です。
1980年には、39万人で2.2%だったことを考えると、ものすごい変化です。
もちろん、288万人の中には、親の収入に依存せずに暮らしている人もいます。
むしろ、親を介護したり、生活面で支援したりするために独身のまま同居している人も含まれています。
問題なのは、親の収入によって生活している人たちが、非常に多いということです。
ここで問題にすべきは、 親の収入によって生活している人たちの多さだ。完全失業者および無就業・無就学者と臨時雇い・日雇いとなっている人のことであるが、 2016年の場合、35~44歳は52万人、45~54歳は31万人で計83万人に及んでいる。ちなみに、もう少し若い20~34歳の134万人も加えれば、実に217万人となる。
今の40代以下の人たちは、たとえ正社員に慣れたとしても問題がないわけではありません。
勤務先の経営状況によっては、賃金が低いまま年齢を重ねてしまった人たちが非常に多いからです。
現在の40代は、バブル経済期に大量採用された先輩社員に出世を阻まれ、賃金がなかなか上昇しづらい環境にある世代でもある。終身雇用が当たり前だった世代と比べ、総じて年金受給額が低くなる見通しだ。すなわち、十分な老後資金を蓄え切れずにいる可能性が大きいということだ。
とりわけ割を食った形になったのが団塊ジュニア世代だ。40代といえば仕事に脂がのる頃だが、ポストが空かず、長年ヒラ社員に留め置かれている人も少なくない。団塊ジュニア世代は人数も多いことから、彼らの出世を遅らせることで人件費の削減効果が上がるようにしようという動きも一部の企業に見られた。
今からあなたにできること
【個人ができること】
①働けるうちは働く
②1人で2つ以上の仕事をこなす
③家の中をコンパクト化する
【女性ができること】
④ライフプランを描く
⑤年金受給開始年齢を繰り下げ、起業する
【企業ができること】
⑥全国転勤をなくす
⑦テレワークを拡大する
【地域ができること】
⑧商店街は時おり開く
まとめ
少子高齢化、人口減少といった言葉を聞いたことはあっても、イメージできないという人がほとんどだと思います。
しかし、日本はこの危機に直面しつながらも、長らく対策を講じず、いよいよそのツケが回ってきます。
本書は、少子高齢化、人口減少が進む日本において、個人レベルでどのような影響が出てくるのかをわかりやすく学べる内容になっています。
元になっているデータは、国や政府が発表している予測がベースになっているため、適当な未来予測ではなく、国全体が想定しなければならない近未来の日本が描かれています。
後半部分では、私たち一人ひとりが今からできる対策についても、言及されています。
世界中のどこの国も経験したことがない、少子高齢化、人口減少の未来に向かって、今すぐに行動を始める人が増えると嬉しく思うと共に、ぜひ本書をお手にとっていただきたいと思います。
『未来の年表』シリーズ一覧
今回ご紹介した『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』は、『未来の年表』シリーズの第2弾です。
2017年に発売された『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』を皮切りに、2021年7月時点で『未来の年表』シリーズとして、4冊が発売されています。
シリーズ累計90万部を超える大ベストセラーとなり、どれもとてもおすすめです。
シリーズの他の本と合わせてお読みいただくことで、より理解が深まると思います。
- 2017/6/14【第1弾】未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 発売
- 2018/5/16【第2弾】未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること 発売
- 2019/6/19【第3弾】未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること 発売
- 2019/10/17【待望の漫画化!】マンガでわかる 未来の年表 発売
- 2021/6/16【第4弾】未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 発売
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本書のような未来予測について、他の本を読んでみたいという方は、成毛眞さんの『2040年の未来予測』もとてもおすすめです。