ここ数年のホットなキーワードの1つがフィンテックです。
FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指します。
かつてからフィンテックの可能性について、言われ続けていました。
しかし、2020年以降世界を襲ったパンデミックにより、現金での支払いや金融機関での窓口でのやり取りが本当に必要なのか、ということに多くの人たちが疑問を持ち始めました。
2025年、皆さんのメインバンクは日本のメガバンクや地銀ではなく、アップルが提供するアップルバンクに変わっているかも知れません。
日本人の私たちは、日本円で買い物をすることが減り、フェイスブックが発行したディエム
デジタルバンクやデジタル通貨が普及することにより、スマホだけで全てが完結し、銀行の窓口に行く必要はなくなっているかも知れません。
振り込み、入・送金は現在でもネットで行う人が増えていますが、2025年にはローンを組むことや海外送金などスマホでワンタップで完結するかも知れません。
そんな銀行と金融業界の未来を描いた山本康正さんの『銀行を淘汰する破壊的企業』をご紹介いたします。
銀行を淘汰する破壊的企業|山本康正 要約
山本康正さんの『銀行を淘汰する破壊的企業』は、大ヒットした『2025年を制覇する破壊的企業』の第二弾です。
前作では、幅広い業界の未来について描かれていましたが、今回は金融業界、特に銀行に焦点を当て、激動の未来を伝えてくれています。
山本康正さんは、三菱UFJ銀行のニューヨーク支店でキャリアをスタートさせ、ハーバード大学大学院、グーグルやベンチャーキャピタルでの勤務と世界のトップエリートとしての経歴を持たれています。
こうした多彩な経歴、そして現場を生の目で見た山本康正さんの未来予測は、ジャーナリストやアナリストが描く未来とは全く違う信憑性が高い内容になっています。
私が予測する未来の姿は、おそらく一般的な方々が予測する内容とは、大きく異なっていることでしょう。しかし、海外での変化を考慮するとこれが事実になるのは近未来です。この洞察を一人でも多くのバンカーならびに、これから金融業界で働こうと思っている若い方などに知ってもらい、対策や成長の参考にしていただければ幸いです。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
前作の『2025年を制覇する破壊的企業』も非常におすすめの一冊です。
本書以上に幅広い業界の未来について予測されており、本書と合わせてお読みいただくとより理解が深まります。
銀行を破壊する11社の思惑
これから数年後、2025年には日本の銀行の姿は今とは全く異なったものになっているかも知れません。
日本の旧態依然の時代遅れの銀行業界を破壊するかも知れない可能性を秘めているのが、下記の11社です。
- アップル( Apple)
- アマゾン( Amazon)
- フェイスブック( Facebook)
- グーグル( Google)
- ペイパル( PayPal)
- ストライプ( Stripe)
- アント(ANT)
- アファーム(Affirm)
- コインベース(Coinbase)
- キャベッジ(Kabbage)
- ロビンフッド(Robinhood)
この11社について、個別にご紹介していきます。
文章だけではわかりにくいことについては、YouTubeの動画なども掲載しているので、合わせてご覧ください。
アップル(Apple)
売上高/時価総額:約2745億ドル(約28兆円)/約2兆3396億ドル(約240兆円)
キーワード:アップルカード、アップルバンク
銀行が整備される以前、人々は自宅に大きな金庫を構えて現金を保管していた。しかし、セキュリティの観点やそのまま保管しておいても何も生み出さないため、銀行に預けることで、よりセキュリティを高めたり、運用によりリターンを得るようになった。銀行はさらに進化し、証券会社とつなぎ株式などの投資商品も扱うようになった。しかしここから先の世界では、銀行だけの専売特許ではなくなる。それは、iPhone ならびにアップルのサービス(ソフトウエア)が、銀行業務のすべてを可能にするからだ。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
このようなプレゼンテーションをティム・クックがする日も近いかも知れません。
これからは24時間iPhoneさえあれば、銀行のサービスを全て使えるようになるかも知れないのです。
資産運用もAIを活用して、今まで以上に手軽に高い利率で行えるようになり、全ての取引履歴はアップルバンクのデータに残っているため、iPhoneから全て確認することができるようになるかも知れません。
アップルは、2019年にアメリカでアップルカードをスタートし、本格的に金融業界へ参入しています。
アップルカードを使用して、アップルと連携しているサービスを値引きがされます。
その値引き分は、キャッシュバックとして、「Apple Cash(アップルキャッシュ)」として、Apple Payの中のデジタル通貨として溜まっていきます。
溜まったアップルキャッシュは、銀行に振り込むことも可能です。
しかし、アップルキャッシュはそのまま友達に送金することができたり、アップルカードの支払いにも使うことができるため、わざわざ銀行に振り込む必要もあまりありません。
そうすると、これから旧来の銀行を介する必要がなくなり、アップル経済圏の中でお金の流れが完結していく可能性があります。
アップルカードは、世界トップの証券会社のゴールドマン・サックスと提携することで展開しています。
アップルバンクについても、既存の銀行と提携して展開していく可能性が高いと思われます。
そもそもアップルが金融業界に進出したのは、金融業界を破壊しようとか、金融業界が儲かるといった理由ではありません。iPhoneへの囲い込みであり、これから先の未来の社会では、すべての業務やサービスがiPhoneやアップルの製品群内で完結するように設計されていくと予測しているからです。つまり、iPhoneなどのアップル製品至上主義にのっとった戦略と言えます。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
アマゾン(Amazon)
創業年/創業者:1994年/ジェフ・ベゾス
売上高/時価総額:約2805億ドル(約30兆円)/約1兆6518億ドル(約165兆円)
キーワード:アマゾン保険、アマゾンローン、アマゾンバンク
すでにアマゾンは、金融事業として、保険やローンを運営しています。
アマゾンの中に出店している事業者に対して事業ローンを提供しており、このサービスを一般向けに展開することも予想されます。
保険については、JPモルガン・チェース、ウォーレン・バフェットの資産運用会社のバークシャー・ハサウェイ、アマゾンの社員に対して、保険商品を提供しています。
JPモルガン・チェース、バークシャー・ハサウェイとの合弁は解消されていますが、今後一般のアマゾンユーザーにも提供していくことが予想されます。
アマゾンは「Apple Watch(アップルウォッチ)」や「Fitbit(フィットビット)」のようなスマートデバイスである「Amazon Halo」をアメリカで販売しています。
普段のユーザーの運動量などのデータを収集することができるため、健康的な生活をしている人には安く医療保険を提供するといったことができるようになります。
著者の山本康正さんは、今後アマゾンもアップル同様に銀行を設立するのではないかと、予想しています。
アマゾンバンクを設立すると私はみています。理由もアップルと同じです。まず、保険やローンサービスに使うアカウントをアマゾンで完結することによって「人生のパートナー」にアマゾンは進化するからです。これまではアマゾンのクレジットカードの先には銀行の口座がありましたが、そこも自社で担うと。
銀行をつくれば、これまで保有していたアマゾンでの購買データに加え、資産データも得ることができます。アマゾンはこの資産データと購買データを紐付けることで、より精緻でピンポイントな、レコメンデーションのアルゴリズムを作り上げるのではないか、と予測しています。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
アマゾンの銀行進出については、田中道昭さんの『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』に更に詳しく描かれています。
フェイスブック(Facebook)
創業年/創業者:2004年/マーク・ザッカーバーグ
売上高/時価総額:約707億ドル(約7兆円)/6598億8948万ドル(約65兆円)
キーワード:国際送金、仮想通貨
フェイスブックの理念に、
人同士のコネクションにフォーカスする
ということを掲げています。
個人と個人の繋がりをより強化していくために、個人間のお金のやり取りにも取り組んでいくと見られています。
今までの送金サービスは、特に国際送金では高額な手数料がかかる上に、日数もかかるとても不便なものでした。
現在一般的に使われている国際送金システムの「SWIFT(スイフト)」は、1970年代に作られてもので、そうした時代遅れのシステムがいまだに全世界で使われているのです。
世界で最も使われているSNSであるフェイスブックが、メッセンジャーを使って国際送金サービスを手数料はほぼ0円で、一瞬で送金できるサービスを実現することができたら、とてつもないインパクトになります。
日本では、あまり海外に送金することはないかもしれませんが、世界では銀行口座を持っていない人もたくさんいますし、海外に出稼ぎに行って故郷に送金している人たちは、何億人も存在しています。
銀行口座は持っていなくても、スマートフォンは世界中の人たちが持っており、そのほとんどの人たちがフェイスブックを使っています。
フェイスブックは、独自のデジタル通貨の「ディエム」の導入を目指していると言われています。
かつては、「リブラ」と呼ばれていましたが、さまざまな障害を乗り越えるために「ディエム」と名称を変更しています。
最初は反発も多かったデジタル通貨ですが、今後様々な国の政府や中央銀行がデジタル通貨を発行しなければいけないという立場に考えを変えており、「ディエム」が必要不可欠になる可能性も今後出てくるでしょう。
マーク・ザッカーバーグが考えた構想が時代の先を行き過ぎていたのかもしれませんが、いよいよ時代が追いついてきたように感じます。
グーグル(Google)
創業年/創業者:1998年/ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン
売上高/時価総額:約1619億ドル(約17兆円)/約6270億ドル(約63兆円)
キーワード:グーグルペイ、グーグルマップ
グーグルは2020年11月、シティバンクならびにいくつかのアメリカの地銀との連携を発表し、銀行が現在行っている、口座開設、入出金、運用などのすべての金融サービスをスマートフォンのアプリ内、正確にはグーグルペイで完結すると発表しました。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
グーグルは、このグーグルペイを通して、ATMでのお金の出し入れや、既存の銀行の窓口業務などの様々な物理的な接触を無くした金融サービスを提供しようしてしているように見られます。
グーグルマップとグーグルペイを連携することで、グーグルマップ上で決済まで行うことができるようになります。
下記のデモンストレーションの動画では、駐車場での決済が一瞬で終わる様子を見ることができます。
今後、ガソリンスタンドやお店などでも、グーグルマップとグーグルペイを連携することでレジで現金などを支払わなくても、スムーズに決済をすることが可能になると見られています。
ペイパル(PayPal)
創業年/創業者:1998年/イーロン・マスク、ピーター・ティール
売上高/時価総額:約177億ドル(約2兆円)/9526億633万ドル(約28兆円)
キーワード:電子決済(ネット)
日本では、知名度は低いですが、アメリカでは絶大なシェアを持ち、電子決済といえばペイパルです。
現在も、ペイパルのシェアは増え続けており、独自の決済サービスを導入できない、個人事業主や規模が大きくない企業には、ペイパルの存在ととてもありがたいものになっています。
20年以上前からデジタルで決済を行ってきており、ここ数年で決済に参入したGAFAや旧態依然の金融機関と比べたら、非常にアドバンテージを持っています。
ストライプ(Stripe)
創業年/創業者:2010年/コリソン兄弟
売上高/時価総額:未公開
キーワード:電子決済(スマホ)
ペイパル同様、電子決済事業で急激に成長しているのがストライプです。
創業者のコリソン兄弟は、30歳にして自力で1000億円以上の資産を作ったビリオネアになった起業家としても、注目されています。
オンライン決済では、クレジットカード番号を入力したり、銀行口座を指定したりと、手間がかかりますし、セキュリティに不安を感じることもあります。
ストライプはこうした手間を排除し、とり簡便にスマートに、なおかつセキュリティも担保された電子決済サービスを提供しています。
日本でもnoteやブログなどで自社の商品を販売したい、フリーランスや中小企業が導入することも増えており、これから更に拡大していくと見られます。
ストライプが優れている点や、決済する際に画面にストライプのロゴや社名が出たり、他のサイトに移動したりすることがないため、ユーザーが途中で購入をやめたり、煩わしさを感じたりすることが非常に少ないということです。
アント(ANT)
創業年/創業者:1999年(アリババ内)
売上高/時価総額:非公開/約30兆円
キーワード:アリババグループ(中国)、電子決済、デジタル
今回紹介されている中で唯一の中国企業です。
もともとは、アリババグループのECサイトや金融事業、テクノロジー会社を行っていた社内ベンチャーです。
アリババはアリペイ以外、資産運用、ローン、保険など、多くの金融サービスを手がけていますが、グループ企業のアントは、これらの事業をアリペイで集めたキャッシュならびに、同じくアリババグループのECサービスなどで得たデータと紐付け、最大限活用しているからです。プライバシーの問題が出てこないことは中国ならではです。
このようなアセットを武器に、アリペイにキャッシュを入れておくだけで利回り約7%というサービスも一時期ですが提供していました。アリババグループで使っている与信やローンの事業のアルゴリズムを、他の金融機関に提供することでも利益を得ています。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
アントは、中国政府とも手を組みデジタル人民元の普及にも協力していると言われており、今後アメリカ政府の脅威になるほどの影響力を持つ可能性があります。
アファーム(Affirm)
創業年/創業者:2012年/マックス・レブチン(ペイパル)
売上高/時価総額:約700億円(直近1年間)/約2兆円
キーワード:個人向けローン
アファームは、高級家電やフィットネスのエアロバイクなど、一括で買うには金額が大きいけど、クレジットカードのローンなどを組むには利率が高すぎといった場合に、低金利でローンを組むサービスを手がけています。
クレジットカードを使うと16〜17%という高い金利を払わなければなりませんが、アファームだと5%程度でローンを組むことが可能になっています。
アファームのローン審査はこのような従来のローン審査と比べ、はるかに簡便です。まず、申請者が何かを書いたり申請するようなことはありません。これまでネット上で大量に購入されてきた商品ならびに支払内容などのデータを基に、商品ごとの適切な金利を設定しているからです。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
従来のローンに比べて、様々なデータを活用しているため、より精度が高く、安い金利でローンを提供することができているのです。
コインベース(Coinbase)
創業年/創業者:2012年/ブライアン・アームストロング、フレッド・エサン
売上高/時価総額:1300億円/8兆円
キーワード:仮想通貨の取引書
コインベースは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨の交換所サービスを行っているベンチャー企業です。
急成長しているコインベースは、今後更に扱える金融商品を増やしていくことが予想されています。
現時点では、コインベースはあくまで仮想通貨の交換事業しか手がけていません。しかし私は、これから先は仮想通貨に限らず、株式、FX、外貨など、デジタル通貨全般といった具合に、取り扱う商品を増やしていくと予測しています。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
現在日本にも複数の証券取引所があり、アメリカにはニューヨーク証券取引所、ナスダックなど、世界各地に証券取引所があります。
証券取引所には様々な役割がありますが、その大きな部分は、買い手と売り手のマッチングです。
現在、ネットでの金融商品の取引が主流になっており、物理的な取引所の存在意義は薄れていっています。
そこに風穴を開けようとしているのが、コインベースなのです。
キャベッジ(Kabbage)
創業年/創業者:2009年/ロブ、マーク、キャサリン
売上高/時価総額:約900億円(2020年買収時)
キーワード:事業ローン
中小企業に対し、資金調達サービス、具体的には経営状態などをチェックする与信を行っているのが、キャベッジです。
キャベッジが従来の銀行の与信、貸付サービスと異なるのは、すべてオンラインで、かつ、与信の可否をデータを基にしたアルゴリズムで自動的に行っていることです。
そのため与信の判断はわずか10分。オンライン、コンピュータによる判断ですから、24時間いつでも受けることができます。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
今まで銀行が行ってきた審査では、問題があり、それは信憑性と担当者の属性によって審査が変わってしまうことです。
キャベッジは、データとアルゴリズムに基づいて審査が行われるため、全ての企業が安心してお金を借りることができるのです。
同社は、2020年アメリカン・エキスプレスに買収され、その価値が世界に知れ渡りました。
ロビンフッド(Robinhood)
創業年/創業者:2013年/ウラジミール・テネフ、バイジュ・バット
売上高/時価総額:1億8000万ドル(約200億円)/約411億ドル(約4000億円)
キーワード:投資アプリ
スマートフォンで株式の売買が全て完結し、ゲーム感覚で若者にも投資の重要性を広めているのがロビンフッドです。
海外では爆発的に広まっており、今まで投資に興味がなかった若者が資産形成を手軽に始めることができています。
ロビンフッドがユーザーから支持されている理由は、大きく2つあります。まず大きいのは、操作がゲーム感覚であることです。私は実際にダウンロードして使ったことがあり肌感覚で分かりますが、まるでスマホアプリのゲームを操作しているような感覚で、取引が完結します。
2つ目は売買手数料はもちろん、ほとんどのサービスが無料で利用できる点です。そのため、株式トレードの知識が乏しく、大きな資金を持っていない若い世代、いわゆるデジタルネイティブなスマホ世代から支持されていて、彼らはロビンフッターと呼ばれています。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
「株式の民主化」を掲げてきたロビンフッドは、手数料を無料にするという奇跡を起こし、金融業界に一気に革命を起こしています。
銀行を襲う3つのメガトレンド
メガトレンド① すべての銀行手数料が0になる
銀行の手数料が0になる理由は、2つあると言います。
1つは、GAFAは既存のサービスで莫大な利益を出しており、金融サービスを提供することは利益を出すためではなく、ユーザーの囲い込みが目的だからです。
2つ目は、スマートフォンで事業ローン完結サービスなどを提供し、コストを削減することで、従来の銀行の収益源であった手数料に依存しなくても収益を出せるビジネスモデルが生まれてきたからです。
メガトレンド② 預金量よりもデータを持つ銀行が未来を制す
ペイパルが世界最大級の銀行であるバンク・オブ・アメリカを時価総額で抜いたことがニュースになりました。
著者の山本康正さんは、ここに未来の金融業界のトレンドが示されていると言います。
バンク・オブ・アメリカは、預金量が約200兆円ですが、この預金を貸すことで、年間2兆円以上の利益を出しています。
金額を見れば、とてつもない利益を出していますが、投資家からは利益率が低すぎると見えるのです。
投資家が興味があるのは、これからその企業がどれだけ成長して、どの程度の利益を見出すかであり、既存の銀行の未来に成長はないことは明らかです。
同様に、日本のゆうちょ銀行やメガバンクも、いまだに預金量で競い合っていますが、世界からは全く評価されていません。
伸びる企業の判断材料の一つが、データを持っているかどうかです。ただし、データは持っているだけでは意味がありません。保有しているデータを活用し、ユーザーや社会から評価される仕組みやサービスとして世に送り出すことのできる、技術力やインテリジェンス(洞察力)が必要です。
山本康正|銀行を淘汰する破壊的企業
メガトレンド③ 24時間365日開いている銀行が標準に
テクノロジーの進化によって、銀行は24時間365日開いていることが当たり前になり、空気のような存在になっていくと言います。
しかし、ここでいう銀行とは、リアルな店舗ではなく、スマートフォンの中のデジタルバンクです。
すでに多くの人が銀行が開いている平日の昼間にわざわざ窓口に行って、番号札を取って待たされることが、いかに馬鹿馬鹿しいことかは気がついています。
今やほとんどの買い物も家にいながらスマートフォン1つで、24時間行うことができます。
それと同じことが銀行業界でも起こっていくのです。
まとめ
テクノロジーが進歩することで、人々の生活がどんどん便利になっていく一方で、いらない職業も増えていきます。
銀行業界にイノベーションが起こることで、たくさんの人がその利益を受け取ることができる一方で、銀行員はどんどんといらなくなります。
かつてiPhoneが発売したことで、デジタルカメラや地図、音楽プレイヤー、カーナビ、電子辞書などダメージを受けた業界を上げたら枚挙にいとまがありません。
もともとiPhoneはこれらの業界を潰したかったわけではなく、ユーザーに利便性を提供しようと顧客目線を貫いたに過ぎません。
これから銀行が大ダメージを受けていますが、それは今まで既得権益にあぐらをかいて時代遅れのビジネスモデルを何十年も継続してきたツケが回ってきたに過ぎないでしょう。
本書は、金融業界やテクノロジーに関する知識がないという方にも、わかりやすく銀行の未来を見せてくれます。
前作の『2025年を制覇する破壊的企業』とあわせて、ぜひお手にとっていただきたい1冊です。