(画像: Jun Sato via Getty Images)
日本を代表するロックバンドであるGLAYのリーダーのTAKUROさんは、インタビューの中で、先の見えない今の世の中で、会社や他人に人生を委ねる生き方ではなく、自分自身で人生の舵を取っていくことが重要であるといいます。
「明日がどうなるかわからない」とか「今就いてる仕事が10年後も20年後も出来るかどうか分からない」という世の中であるならば、なおさら”もう助手席に乗るのはやめて、自分でハンドルを持った方がいいんじゃないのかなって”
TAKURO (GLAY)
↑GLAY・TAKURO「もう助手席に乗るのはやめて、自分でハンドルを持った方がいいんじゃないのかなって」(画像: TPG via Getty Images)
GLAYと言えば、1994年にX JAPANのYOSHIKIさんのプロデュース曲「RAIN」でメジャーデビューし、「HOWEVER」、「口唇」、「Winter,again」など数々のミリオンセラーを記録し、多くの日本の音楽記録を更新、1999年に行われた『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL LIVE IN MAKUHARI』は約20万人を動員し、いまだ破られていない有料ライブとしての動員数世界最多記録を保持しています。
オリコン集計によると2015年現在、CD総売上枚数は累計3800万枚を突破し、日本歴代7位。2015年5月には、10年ぶりの東京ドーム公演を大成功させ、2日間で約11万人を動員し、その人気はいまだに衰えることなく、2日目にはメジャーデビューをプロデュースした恩人でもあるX JAPANのYOSHIKIさんも駆けつけ、デビューから20年以上経ってもなお日本の音楽シーンを牽引する大人気ロックバンドです。
↑デビューから20年以上が経過しても、日本のロックシーンをトップを走り続けるGLAYと、GLAYを発掘した張本人のX JAPAN YOSHIKI
数々のミリオンセラーを連発したGLAYも、今の日本のCD不況や音楽シーン全体の低迷により、かつての輝きが失せたと多々言われ、確かにメディアへの露出やCDの売上は減っているかもしれませんが、デビュー20年以上経って東京ドームの2DAYS公演のチケットを即完売させ、超満員で大成功させるアーティストは日本にはほとんど存在せず、GLAYの活躍の形が変わっただけのように感じます。
かつて『小室ブーム』と言われるほどの人気を誇った小室哲也さんも「今の時代に東京ドームを満員にできる人はほとんどいない」と語っていましたが、日本全体が音楽不況となり、登竜門と言われた日本武道館や東京ドームを満員にできる動員力のあるアーティストが減ってきていることは事実だと感じます。
↑小室ブームを巻き起こした小室哲哉さんも今の時代に東京ドームを満員にするのは凄いことだと評価する (画像: Jun Sato via Getty Images)
GLAYのライブ公演のチケットを入手することはファンクラブ会員でもいまだに困難だといわれており、2014年にひとめぼれスタジアム宮城で開催された、『GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary』は、東北の音楽ライブ公演史上過去最多となる5万5000人を記録し、2015年7月には、GLAYの故郷の函館にオープンした函館アリーナのこけら落とし公演『GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2』を超満員で成功させ、かつてのCDのミリオンセラーを連発するGLAYではなく、ライブバンドGLAYとして多くのファンを魅了しています。
↑ライブバンドGLAYとして、多くのファンを魅了し続ける
iTunesなどで欲しい音楽はCDショップに行かなくても一瞬でダウンロードでき、インターネットでYouTubeなどの動画サイトを開けば、買わずとも手軽に音楽が聞ける時代です。一昔前までは、CDはCDショップで視聴しなければ内容はわからず、ラジオから流れる曲を録音したり、好きなアーティストが出演する音楽番組を見るために家族の中で熾烈なチャンネル争いがあったり、お気に入りのカセットテープやMDを作成することが当たり前でしたが、今や音楽は全てスマートフォンで視聴から購入まで一瞬で出来てしまいます。
2013年には、世界的レコード販売店グループのHMV(HMVジャパンはローソンが運営してるため影響はない)が破たんしたことが世界中に報道され、CD不況に歯止めがかからなくなってきています。
日本のロック界の王様、永ちゃんの名で愛される矢沢永吉さんも、ダウンロードの時代だからこそ、ダウンロードできないライブに価値があると言っています。
これは音楽の世界以外にも言えることだと思いますよ、どんなジャンルにも言えることで、ペーストができないもの、貼り付けが出来ないもの、ダウンロードができないもの”しか”残らないと僕思いますよ。”しか” 残らないというか、そうゆうものが価値が変わらないじゃないかなと思います。
矢沢永吉
↑ダウンロードの時代でも、ダウンロードできないライブに価値がある (画像: Ken Ishii via Getty Images)
矢沢永吉さんは、キャロルとしてデビューする前から、ビートルズの書籍を読み漁り、音楽業界のあらゆる権利という権利を調べつくしたことで有名です。矢沢永吉さんが、資産100億円以上とも言われる財を築くことが出来たのも、著作権や肖像権、原盤権等の権利を自らの手で管理してきたことが大きく影響しているといわれています。音楽業界はアーティスト本人が音楽に集中するあまり、こうした権利関係を事務所などに任せ、アーティストが十分な収入を得られないという歪な構造がいたるところに見られていました。
GLAYも元所属事務所から印税収入が振り込まれない等というトラブルがあり、2005年に元所属事務所から独立、2010年には新レーベル『loversoul music & associates(2016年にLSGに改名)』を立ち上げ、「GLAYがもっと音楽に対して真っすぐである為に」という想いに基づき、GLAY自らが運営を行っています。現在GLAYは自身のオフィシャル通販サイトであるG-DIRECTを運営し、他の小売業界同様、問屋や卸業者などが中抜きをしているところに、直販という戦略をとり、業界に大きな風穴を開けました。また、iTunes Storeなど各ダウンロードサイトでの配信も早くから積極的に取り入れており、近年では発売前のシングルをiTunes Storeなどで先行配信するという大胆なことも行っており、ファンを楽しませ続けています。
↑表立った活動は減っても、ファンにより近い距離で活動をし続けるGLAY (画像:GLAY Official Store G-DIRECT)
今の日本の音楽業界の状況に対して、TAKUROは「音楽業界の不振とかCDの売り上げ減退とか聞く中で、誰か人の任せておく時代ではないのかもしれない」と考え、事務所の独立や独自の通販サイトの作成、数々のライブ公演などを通じて、しっかりと自分たちの音楽を届けたい人に届けることを約束しています。
自分たちの音楽を自分たちの責任で届ける
TAKURO (GLAY)
長引く不況で消費者の節約志向は変わらず、小売業界などは問屋・卸業者などへの不要な費用を少しでも省いて、消費者へダイレクトに届けることによって、少しでも費用を安くしようと、販売形態が変わってきており、それは音楽業界も例外ではないように感じます。現に、こうした形態の変化を出来なかった多くのアーティストは音楽業界の最前線で活躍し続けることができず、GLAYの同世代のバンドはほとんどが引退を強いられています。
↑ランキングの上位は、マーケティング力、経済力が強い事務所が占め、かつて活躍したアーティストたちは引退を強いられている (画像:オリコンミュージックストア│2015年 オリコン年間CDランキング【総合シングル】)
GLAYのような人気ロックバンドも、私たちも個人としても、会社や誰かに頼るのではなく、しっかりと自分の人生に責任を持っていかなければいけない時代になっています。GLAYが元所属事務所に裏切られたように、先の見えない今の時代、大手企業で働いていても会社が私たちのことを裏切る可能性は大いにあり得ます。現に、かつての日本を代表する電機メーカーとして日本経済を牽引した東芝やSHARP、SONYといった企業が次々に数千名単位のリストラを発表し、日本の大企業神話の崩壊がほぼ確実になりました。
↑時代は、会社に頼らず、個人が力を持たなければいけない時代 (画像: loversoul music & associates)
GLAYは、リーダーのTAKUROをはじめ、ヴォーカルのTERU、ギターのHISASHI(生まれは青森)、ベースのJIROのメンバー全員が函館出身ということもあり、業界の中でも仲の良さが有名で、毎回ライブの後の打ち上げでは少年のような仲の良さで、スタッフも驚くほどの結束力があるといいます。解散しないことをライブや各メディアでも公言し続けることができるバンドも、珍しいと思います。
↑GLAYは仕事もオフも仲良しであることは業界の中でも非常に有名
GLAYは交友関係が広い事でも有名で、ホリエモンこと堀江貴文さんもGLAYの友人の一人ですが、その堀江さんも初めてGLAYと出会ったときのことを著書の『君がオヤジになる前に』の中で綴っています。自分自身の成功のためだけに突き進んできた堀江さんは、仲間やファンのために時間や体力を使うGLAYの包容力が不思議に思え、心動かされたようです。
GLAYの打ち上げ会場で、楽しそうにしているメンバーたちを見て。
20年間、同じスピードで、高いレベルへかけ上げるのできる仲間たちがいたら、それはそれで楽しい人生だったのかな……と、少し思った。
同じステージでライブやって、何万人もの人を感動させた後、高校時代の友達みたいに談笑できる彼らが、ほんの少しうらやましく映ったのも事実だ。
堀江貴文│君がオヤジになる前に
先の見えない世の中、長引く不況で、いざという時に会社は私たち個人のことを守ってはくれず、自分自身で自分の人生のハンドルを握り、人生を切り開いていくことが重要な時代です。しかし、個人が力を持たなければいけない時代には変わりありませんが、それは一人ですべてを完結させるわけではなく、信頼できる仲間、共に同じ目標を目指せる仲間、一生笑いあえる仲間と一緒に苦難を共にし、成長していくことなのかもしれません。
皆さんは、しっかり自分の人生のハンドルを握って、目的地へ進めているでしょうか。
「明日がどうなるかわからない」とか「今就いてる仕事が10年後も20年後も出来るかどうか分からない」という世の中であるならば、なおさら”もう助手席に乗るのはやめて、自分でハンドルを持った方がいいんじゃないのかなって”
TAKURO (GLAY)
参考文献│胸懐│GLAY函館物語│GLAY東京物語│GLAY―GLAY STORY 永遠の1/4│私の中のGLAY│Beat of GLAY│GLAY‐夜明けDaybreak│成りあがり How to be BIG―矢沢永吉激論集│アー・ユー・ハッピー?│イチロー×矢沢永吉 英雄の哲学│2022―これから10年、活躍できる人の条件│パーソナル・マーケティング│フリーエージェント社会の到来 新装版—組織に雇われない新しい働き方│君に友だちはいらない│君がオヤジになる前に