2019年4月から始まった働き方改革。
2020年、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、半ば強制的に働き方が変わって来ています。
2020年の秋頃からは、トヨタ自動車やみずほフィナンシャルグループなど、業界の大手が年功序列を廃止し、成果主義を導入していくことが大々的に報道されました。
かつて安泰だと言われていた大企業が年功序列を廃止し、リストラを我が物顔で行うようになりました。
誰もが自分の将来に不安を感じる中、次の時代の希望になる働き方が注目されています。
橘玲さんの『働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる』では、年功序列、成果主義、その先に来る働き方を先取りすることができます。
働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる|橘玲
橘玲さんの『働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる』は、激変する労働環境の中で、成果主義の次に来るグローバルスタンダードの働き方について、わかりやすく教えてくれる1冊です。
橘玲さんは、金融小説の『マネーロンダリング』や、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』など多数のヒット作があり、様々なジャンルの本を出されていますが、本書は働き方に特化しています。
本書は、次のような方にオススメです。
働き方改革の裏側を知りたい方
転職、独立を考えている方
これから就職する学生
世界のスタンダードの働き方をしたい方
未来世界で生き延びたい方
今の働き方に、不満、不条理を感じる方
2022年3月19日には、文庫版が発売されました。
オリジナルの単行本は、コロナ前の2019年3月21日に発売されましたが、2022年に文庫本が発売されています。
本書がいかにアフターコロナ時代の働き方を事前に予測し、人気があるのかを証明しているように感じます。
文庫本のみに収録されている特別寄稿もあるため、今後購入される際には文庫版がおすすめです。
働き方1.0〜5.0とは
本書のタイトルにもある、働き方2.0と4.0という働き方のバージョンですが、その定義からご紹介します。
橘玲さんは、次のようにそれぞれの働き方を定義しています。
最初に、本書における「働き方」を定義しておきましょう。論者によってさまざまな主張があるでしょうが、ここでは次のように使います。
働き方1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
働き方5.0 機械がすべての仕事を行なうユートピア/ディストピア
安倍政権が進める「働き方改革」とは、働き方1.0を強引に2.0にヴァージョンアップしようとするものです。
(中略)
問題は、働き方2.0を実現したとしても、それではぜんぜん世界の潮流に追いつけないことです。最先端の働き方は、3.0から4.0に向けて大きく変わりつつあるからです。
働き方1.0の終焉
本書が発売された当初は多くの人が働き方改革の本質を理解できていなかったのではないでしょうか。
働き方改革は、生産性を高め残業を減らす、副業解禁で個人として稼ぐ力を高められる、など、プラスの面ばかりがクローズアップされていたように感じます。
しかし、橘玲さんは、働き方改革は働き方1.0から2.0にバージョンアップさせるものと断言をしていました。
年功序列・終身雇用を廃止し、成果主義に移行していく残酷な働き方改革の正体を認識出来ていた人は少ないと思います。
終身雇用を維持していくことの厳しさは、経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長がコメントしたことから、終身雇用がいつまでも続くものではないということはうっすら国民に浸透されていました。
しかし、2020年の年明けには経団連が、新卒一括採用や終身雇用、年功序列などを廃止していくことを発表していました。
(画像:NHK NEWS WEB|日本型雇用システムの見直し明確に 経団連が春闘に向け指針)
新型コロナウイルスが流行してなかったとしても、今年は年功序列・終身雇用の終焉の年となっていたのです。
この衝撃的な経団連の発表から始まった2020年ですが、その後、新型コロナウイルスが日本でも拡大していきました。
そして、多くの企業が業績の悪化を発表する中、2020年秋にはトヨタ自動車やみずほフィナンシャルグループが成果主義の導入を発表しました。
本書が発売当初日本から終身雇用・年功序列が廃止され、成果主義がやってくるとは、にわかにも信じられないところがありました。
しかし、橘玲さんが記載している通りに世の中は進み、成果主義が徐々に広がり始めています。
ようやく時代遅れの日本の働き方が世界に追いつくと思われましたが、グローバルスタンダードはさらに先に進んでいるのです。
働き方2.0という成果主義の世界
政府が働き方1.0を廃止した後にやってくるのが、成果主義の世界である働き方2.0です。
働き方2.0でイメージができるのが、外資系投資銀行やヘッジファンド、コンサルティングファームのような働き方でしょう。
いわゆる、「Up or Out」の世界です。
世界を代表するコンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーでは、3年間で結果を出さなければクビになるか、3年以内に結果を出すことが求められています。
外資系投資銀行でも、結果が出なければ一瞬でリストラをされることは多くの人が知っていることだと思います。
リストラと一言に言っても、日本で言われている早期退職の募集や窓際族に追い込むといった間接的なものではなく、ある日突然、人事部に呼ばれその場でクビが告げられます。
リストラがしにくく、いまだに年功序列が残る日本ですが、これから徐々に働き方2.0が浸透していくことになります。
トヨタ自動車やみずほフィナンシャルグループが給与体系を変更し、年功序列をやめていくことが発表され、話題になりました。
(画像:ダイヤモンド・オンライン|みずほ銀行は10月に給与改革、メガバンク「年功序列打破」の現在地)
こうした大企業の大きな方向転換は、徐々に他の企業や業界に広がっていくことになるはずです。
いよいよ、日本の守られた雇用が崩壊して、実力主義の世界がやってきます。
能力が高い人は、働き方2.0の時代になれば、好きなだけ稼ぐことができると感じるかもしれません。
しかし、能力が高ければ、働き方2.0の世界で豊かになれるわけではないところに落とし穴があります。
給料の決まり方については、下記の小暮太一さんの『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』がおすすめです。
働き方3.0という新たなエリート層
GAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーム企業が世界経済に多大な影響を与えるようになりました。
そして、働き方1.0や2.0と言った働き方は、もはや時代遅れになり、世界の主流は働き方3.0もしくは4.0に移動しつつあります。
働き方3.0は、GAFAのような世界を牽引するテクノロジー企業でプロジェクト単位で働いているような人たちになります。
今の日本人でこうした働き方ができている人たちは、ほとんどいないと思います。
今から、GAFAへの入社を目指そうと思って、入社できるという可能性も非常に低いのではないでしょうか。
働き方4.0という新たなグローバルスタンダード
本書では、今世界のスタンダードの働き方は、働き方4.0へ移行しつつあると指摘しています。
世界が働き方4.0に移りつつあるにも関わらず、日本はようやく働き方2.0へ変えようとしており、ここでまた世界から差をつけられてしまいます。
働き方4.0で、キーワードになるのが、ギグ・エコノミーという言葉です。
『ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方』の著者であるダイアン・マルケイさんは、ギグ・エコノミーについて次のように書いています。
低スキル労働者もギグ・エコノミーに参加すれば、バッドジョブよりもましなワークにシフトするチャンスが生まれるのだ。
(中略)
高いスキルを持つ働き手にとって、ギグ・エコノミーはいいジョブからとてもいいワークに乗り換えるチャンスとなる。伝統的なバッドジョブに就いている低スキルの働き手は、悪いジョブよりもましなワークを得る可能性が広がる。ジョブという型からワークという中身を取り出すことで、従来の会社勤めで得られる以上の自律性・柔軟性・選択権が実現できるからからだ。
ダイアン・マルケイ|ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方
ギグ・エコノミーは、低所得者の人でも気軽にいい仕事を見つけることができ、高いスキルを持っている人にもさらに素晴らしい可能性を手にすることができる可能性があるのです。
ギグ・エコノミーの代表例が、UberやAirbnbといったプラットフォームが登場したことです。
今やたくさんのギグ・エコノミーを提供するプラットフォーム企業が増え、ギグ・ワーカーも世界中で増加し続けています。
これからは、どこの会社に就職するかを考えるのではなく、どのプラットフォームを選択するのかが世界の常識になっていきそうです。
日本では、様々な法律や条例のせいで、UberやAirbnbが他の国に比べて利用しにくい状況がありますが、その分規制のないプラットフォームの可能性を感じることができるように思います。
ギグ・エコノミーは、今までの働き方1.0から3.0では実現することができなかった、自分の価値観を大切にし、柔軟性や充実感を得ることができます。
自分の好きな時に、好きな場所で、好きな仕事を、好きな人とやることができるのが、ギグ・エコノミーなのです。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、数年間かけて変わっていくはずだった働き方が一気に変わり始めています。
数ヶ月前まで、安泰だった働き方1.0が一瞬でなくなり、働き方2.0を選択する企業がものすごい勢いで増えていっています。
働き方が良い方向に進んでいるように見えますが、グローバルスタンダードは働き方4.0へ移りつつあります。
新型コロナウイルスによって、これからの働き方を模索している人も多いと思いますが、これからの働き方を考える上で、非常におすすめの一冊です。
2022年3月19日には、文庫版が発売されています。
文庫本のみに収録されている特別寄稿もあるため、今後購入される際には文庫版がおすすめです。
橘玲さんが、人生をロールプレイングゲームに例えて、人生の攻略法を明かした『人生は攻略できる』についてもご紹介しています。
本書とあわせてお読みいただくと理解が深まると思います。
橘玲さんが、日本の構造的な社会問題をぶった斬った『上級国民/下級国民』も紹介しています。若者世代が損をし続けた平成という時代が終わり、令和もこの構造は変わりません。いかにして下級国民を抜け出していくべきなのかを説いた話題作です。
上記の『上級国民/下級国民』の続編的存在の『無理ゲー社会』もオススメです。
これからの時代の働き方については、下記のブログなどでもご紹介しています。


