もしあなたが、起業をしたり、転職をしたり、事業を買収をしたりしようと思った時、次のような企業を選ぶでしょうか。
「それは絶対にやめといた方が良いですよ。何度も説明したように、オンデーズは年間の売上が、たったの20億円しかないのに、銀行からの短期借入金が14億円もあるんですよ!借入金の回転期間はわずか8ヶ月、約定返済額は月に8千万円から1億円にものぼる。それなのに毎月、営業赤字が2千万近く出ているという、異常な資金繰りに陥ってしまっている会社ですよ。買収したとしても、これを再生するなんて、まず無理ですよ!」
答えは、NOだと思います。
しかし、この倒産寸前のオンデーズというメガネチェーンを買収し、再生に挑んだ男がいます。
破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)|田中修治
田中修治さんの著書である『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)』は、著者の田中修治さんが倒産確実と言われたメガネチェーンのオンデーズを買収し、再生に立ち向かった実話をもとに小説にしたものです。
著者、『カンブリア宮殿』出演(2019年8月8日)!
村上龍氏も絶賛!!
企業とは、働くとは、仲間とは何か――。
実話をもとにした、今大注目のビジネス小説。
am͜a͉zonより
本書は、次のような方にオススメです。
転職を考えている
メガネ業界について知りたい
オンデーズのファン
働くことについて考えたい
本書の主人公は、筆者でもある田中修治さん。
当時、30歳で小さなデザイン会社を経営していたと言います。
見た目は、金髪に近い茶髪のロン毛で、破れたジーパンに黒いジャケットで仕事をする若手のIT社長のような風貌で、メガネ業界に全く縁もゆかりもなかった方です。
その田中修治さんが、ひょんなきっかけから、メガネチェーンのオンデーズの買収のきっかけを得るところから物語はスタートします。
個人で3000万円の増資を引き受け、オンデーズの発行済み株式の70%以上を取得し、意気揚々と買収したオンデーズですが、壮絶な戦いの始まりでもありました。
突きつけられた「死刑宣告」
2008年3月にオンデーズの代表取締役社長に就任した、田中修治さんですが、最初の関門はなんと就任したその月の月末に訪れます。
銀行などへの引き継ぎを慌ただしく終わらせ、ようやく経営をできる状態になった時は、既に3月の末日まで残り10日になっていました。
その時に突きつけられた現実は、月末に1000万円の資金ショートという、厳しいものでした。
僕たちに経営のバトンが完全に渡されたわけだが、その時点で3月の末日まであと10日を切っていた。そして予想される初月の資金ショートの額はおよそ1千万。
ありとあらゆる手段を使い、資金繰りを合わせようと翻弄していきます。
取引先への支払いを引き伸ばしてもらうよう頭を下げたり、銀行への返済を遅らせたり、ベンチャー企業への投資を行なっている企業を駆けずり回ったりなど、考えうる手段を全て行おうとします。
しかし、ただでさえ倒産寸前と言われていたオンデーズからの依頼をそう簡単に引き受けてくれるような先はほとんどなく、社長就任直後に倒産という悲劇が見え隠れします。
その結果、
末日まであと1日と迫った日の深夜、奥野さんから僕の携帯電話にメールで連絡が入った。
「今月末は、どうやらなんとかなりそうです」
「良かった。それで、全部支払った後、月末の預金残高はいくらくらい?」
「20万です」
「残高が20万……」
なんと、会社の預金残高が20万円という、学生の預金額よりも少ないようなお金を僅かに残して、首の皮一枚生き延びることができたのです。
壮絶な会社経営のスタートとなりましたが、これは再生への長い長い戦いの序章に過ぎなかったのです。
絶対にコケられない新店舗
ギリギリの状態で経営初月を乗り切った田中修治さんですが、なんと僅か3ヶ月後の2008年6月に新店舗をオープンに向けて動き始めます。
オープン予定は、7月19日。
たったの1ヶ月の怒涛のオープン準備を行なっていきます。
もちろん、会社の資金繰りはほとんど改善しておらず、本来ならば新店舗をオープンさせるなんてことはあり得ない状態。
社内の幹部の中でも反対する人が多く、半ば強引にオープンを決意しました。
しかも、その新店舗のオープン先に選んだのは、東京のど真ん中、高田馬場駅から徒歩5分という好立地ではありますが、当然家賃がかさむことは間違いありません。
OLやサラリーマン、そして学生であふれる街ではありますが、その中で倒産寸前のオンデーズの社運をかけた挑戦は成功するのでしょうか。
オープン当日、田中修治さんや幹部一同お店で待機をして迎えたオープン時間。
長蛇の列が店内になだれ込んでくることを想像し、オープン準備を続けた日々が走馬灯のように蘇ります。
待ち受けていた結果は、想像に反して、誰もお店に入ってこないという厳しい現実でした。
人通りは多いのに、誰1人としてオンデーズに見向きもせずに歩き去っていきます。
結局、オープン初日の売上こそ何とか30万円を確保したものの、2日目以降は一日数万円と地を這い続けた。それも連日、僕や明石以下、役員たちが声を嗄らして呼び込みを続けた結果の数字である。
その後1ヶ月間の売上はわずかに150万円に留まり、期待の新店舗はドル箱どころか連日大赤字を垂れ流す、新たなお荷物店舗を産んでしまっただけという無残な結果となってしまった。
社運を懸けた高田馬場店は、いきなり最初から大失敗に沈んでしまったのである。
ここで、オンデーズも倒産かと思われましたが、実はその裏で会社内では社長の田中修治さんの知らない場所で、物凄い勢いで商品部の在庫管理などの一新が行われていたのです。
これで、なんとか高田馬場の赤字分を考慮しても、数ヶ月生き延びることができるようになっていたのです。
しかし、オンデーズへは更なる苦難が次々と襲いかかってきます。
まとめ
果たして、オンデーズは再生することが出来るのでしょうか。
是非、続きは実際に本書をお手に取っていただき、ご自身で確認いただきたく思います。
ここまでお読みいただいた方は、だいぶネタバレしているのではないかとお感じになられたかもしれませんが、ご安心ください。
ここに書かせていただいた内容は、本書の序盤に書かれている事ばかりで、オンデーズの戦いの本番はまだまだこれからなのです。
この後、社内に裏切り者が現れるという映画のような事件や同業他社からの圧力、側近との突然の別れなど、まだまだオンデーズには数え切れないほどの試練が訪れます。
本書を読んで感じることは、著者の田中修治さんのオンデーズ再生のためならリスクを考慮せず一気に突き進む姿勢や、働く仲間の大切さです。
人が何かにチャレンジしようと思った時には、リスクとリターンを計算し、リターンが上回ると思えば、挑戦するはずです。
しかし、田中修治さんは、リスクを一切考慮せず、オンデーズが良くなる事だけを考えて、突き進んでいきます。
リスクを無視することがどんなときも良いことであるとは言えない気がしますが、リスクを恐れて、挑戦できない人が大半の世の中で、ここまで大胆に様々なことに挑戦していくことが出来る姿勢は見習うべきだと感じます。
また、会社の社長と言えど、何から何まで1人で出来るわけではありません。
社内には、様々なプロフェッショナルが存在し、その人たちの良さを活かしながら、会社全体として良い結果を導かなければなりません。
今の日本の企業の多くが、新卒一括採用を行なっており、個人個人の能力などを無視した人事配置がなされているように感じます。
オンデーズ再生までの登場人物を見ていると、それぞれの人が輝けるポジションを田中修治さんが上手く配置した結果、前進していけているように感じます。
本書の後半には、オンデーズ再生に向けて立ち向かう姿に涙なしには読めません。
働くとは何か、仲間とは何か、そして人生とは何かを考えさせてくれ、オススメの一冊ですので、是非お手に取っていただきたいと思います。