もしあなたの目の前に金塊が落ちてたとしたら、どのようにするでしょうか。
スマホで写真を撮ってSNSに投稿したり、知り合いを呼んだり、もし誰も見ていなければ持って帰ることは出来るかなどを考えると思います。
しかし、もし、赤ちゃんや動物の前に金塊を置いたとしたら、どうでしょうか。恐らく触ってみたり、眺めてみたりはするかも知れませんが、次第に興味を持たなくなるのではないでしょうか。
なぜ、同じ金塊でもこのような違いが起きるかというと、私たちは「金塊には価値がある」ということを知っていて、赤ちゃんや動物は金塊の価値に気がつくことができないからです。
自分のすぐそばに「価値ある」ものが存在していても、その価値を認識する力がないと、「自分の周りには何も価値あるものがない」と思えてしまいます。
マーケット感覚という言葉を聞いたことがあるでしょうか。なかなか耳慣れない言葉かも知れませんが、「売れるものに気がつく能力」「価値を認識する能力」のことを言います。現代では、「価値を認識する力」が二極化していると言います。
自分にはマーケット感覚なんて、必要ないと思う方もいるかも知れません。しかし、次のように述べられています。
「マーケット感覚」とは、一般の会社員から公務員、学者、医者から専業主婦、そしてアーティストからエンジニアに至るまで、金融や営業とは無関係にいる人も含め、全ての人の働き方や生き方に、深く関わってくる能力です。
今、多くの人の人に求められている能力が、「マーケット感覚」だと言われています。
マーケット感覚を身につけよう—「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法|ちきりん
ご紹介する本は、月間200万PVを超える「Chikirinの日記」を運営する超人気”社会派”ブロガーである、ちきりんさんの著書である『マーケット感覚を身につけよう—「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』です。
本書の目的は次の3つであると紹介されています。
- マーケット感覚とは何かを説明し、
- それがなぜ大事なのかを理解していただき、
- マーケット感覚を身につけるための具体的な方法論を提示すること
マーケットとは?
(画像: rarrarorro / Shutterstock)
そもそもマーケットとは、何を意味するのでしょうか。ちきりんさんは、本書の中で下記のように説明しています。また、日本語では市場と訳され、同じ意味になります。
- 不特定多数の買い手(需要者)と不特定多数の売り手(供給者)が
- お互いのニーズを充たしている相手とマッチングされ、
- 価値を交換すること
物を買いたい人と、売りたい人がいるから、マーケットが生まれてきました。働きたい人と働き手が欲しい人がいるから、労働力と賃金をマッチングさせる就活市場が生まれ、結婚したい男性と結婚したい女性がいるから婚活市場が生まれてきました。
物の交換だけではなく、そのものが持つ価値を交換したい人たちがいれば、マーケットが生まれてくるのです。価値同士を交換するため、お金の価値を求めれば、売買や契約が行われますが、物の価値同士が交換される場合は、物々交換になることもあります。
いずれの場合でも重要なことは、価値を交換していることであり、価値が分からなければ交換することができないため、「マーケット感覚」が重要であるのです。
最近では、高学歴で難関資格や高いスキルを持っているにも関わらず、ずっと不安を感じ続けている人がいる一方で、学歴や資格は持たなくても何とかなると前向きな人たちに二極化していると言います。
前者は、自分が持つ価値を理解していないから、どのように市場に対して自分が価値を提供できるがわかっていないため、職を失うのではないかという漠然とした不安に駆り立てられてしまっています。
後者は、学歴や資格以外にも、自分が市場に提供できる価値をしっかり認識しているからこそ、自分の未来は自分で切り開けるという自信に満ち溢れているのです。
ちきりんさんは、重要なことは、「価値ある能力」ではないと言います。
どんな分野であれ10年も働いたら、「自分には売れるモノなど何もない」なんてことはありえません。もしそう感じるのだとしたら、その人に足りないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に、気がつく能力」です。
ANAの競合はどこか?
(画像: Vytautas Kielaitis / Shutterstock)
ANAという航空会社がありますが、その競合はどこでしょうか。
JAL、シンガポール航空、エミレーツ航空などの大手の航空会社を思い浮かべる人も多いと思います。近年、急増しているスカイマーク、エアアジアなどのLCCをイメージする人も多いと思います。
しかし、ちきりんさんがいう、「価値」という側面から考えると、違った答えが見えてくるはずです。
そもそも、なぜ飛行機に乗るのでしょうか。
旅行のため、受験や就職活動のため、引越しのため、出張のため、など、利用する人によって、目的は違います。
家族で旅行する際に、国内であれば、飛行機ではなく、新幹線でお弁当を食べ、景色を見ながら移動することの方を、望む人たちもいるかも知れません。すると、新幹線もANAの競合になり得ます。
地方に住む学生が、大学受験や就職活動のために一時的に東京や大阪に行くための手段として利用するのであれば、コストを下げるために、夜行バスで移動しようと考えるかも知れません。
世界各国に拠点があるグローバルカンパニーの社員が、それぞれの拠点の職員たちと会議をするために、出張をすることを考えているならば、出張をせずとも、テレビ会議をしようと考えうるかも知れません。その場合は、ANAの競合は、テレビ会議システムを提供するCiscoなどの通信会社、もしくはGoogleハングアウトやSkypeなども競合になり得るのです。
まとめ
普段あまり価値をいうことを認識する機会は少ないかも知れません。しかし、価値に注目することで、新たな発見がたくさんあるはずですし、自分自身の人生に必ずプラスになるはずです。
本書は、ここで紹介したANAの例だけでなく、高校野球とプロ野球、婚活市場やアイドル市場、カツラとウィッグ、などなど、生活に身近で、イメージがしやすい例がたくさん紹介されており、普段マーケット感覚なんて全く意識しない人にも、とても読みやすくオススメです。
また、著者のちきりんさんが女性であるということもあり、仕事を頑張りたいビジネスウーマンや、専業主婦の方、子供が生まれた方は子育ての合間に読むのにも、とても面白い一冊です。


