【書評】上級国民/下級国民|橘玲 [要約・感想]

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2019年4月、東京の池袋の横断歩道で87歳の男性が運転する車が暴走し、31歳の母親と3歳の娘がはねられて死亡したという事件は記憶に新しい人が多いと思います。

事故を起こした人は元高級官僚だったため逮捕されず、ネット上で「上級国民」という言葉が飛び交いました。この事件をきっかけに日本人の多くが世の中には「上級国民」という人たちが優遇され、自分たちは「下級国民」なのかと改めて認識した事件となりました。

 

橘玲さんの『上級国民/下級国民』は、誰もが存在をなんとなく気がついていながら、見て見ぬふりをしていた「上級国民」と相対する「下級国民」について、ズバズバとぶった斬りしてくれています。

やっぱり本当だった。

いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。これが現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです。(まえがきより)

バブル崩壊後の平成の労働市場が生み落とした多くの「下級国民」たち。彼らを待ち受けるのは、共同体からも性愛からも排除されるという“残酷な運命”。一方でそれらを独占するのは少数の「上級国民」たちだ。

Amazonより

上級国民/下級国民|橘玲 著

上級国民/下級国民|橘玲

言ってはいけない 残酷すぎる真実』などで著名な橘玲さんの著書であるため、他の本と同様にかなり本質に切り込んだ内容であり、過激な内容も含まれているため、マイルドな本を希望される方にはお勧めできません。

しかし、日本の構造的な問題や「モテ」と「非モテ」の分断、これからの時代に生き残る方法など、たくさんのデータを元に解説してくれているため、リアルな今を知りたい方にはとてもオススメです。

ネット上での反響も強く、かなり評価の高い一冊だと言えます。

本書は、次のような方にオススメです。

icon-check-square-o 下級国民にはなりたくない方
icon-check-square-o 日本の現状に不満を感じる方
icon-check-square-o これからの時代を生き抜く力が欲しい方
icon-check-square-o 橘玲さんの本が好きな方
icon-check-square-o 包み隠さずリアルな現実を知りたい方

 

本書における上級国民と下級国民の定義

タイトルにある上級国民と下級国民について、本書の中で明確に定義はされているわけではありません。

明確に異なるものとしてあげられているのが、上層階級と下層階級という言葉です。これらの言葉は一見すると同じように感じますが、異なるものとして扱われています。

下層階級から上層階級には、自分の努力によって移動することができます。しかし、上級国民と下級国民は、移動することができず、個人の努力が役に立たない冷酷な自然法則として扱われています。

現代社会では、「エリート」や「セレブ」は「努力して実現する目標」です。「上層階級(アッパークラス)/下層階級(アンダークラス)」は貴族と平民のような前近代の身分制を表わしていましたが、その後、階級(クラス)とは移動できる(下流から「なり上がる」)ものへと変わりました。それに対して「上級国民/下級国民」は、個人の努力がなんの役にも立たない冷酷な自然法則のようなものとしてとらえられているというのです。

いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。

これが、現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです。

本書では、上級国民と下級国民の分断は、日本だけではなく、世界中で同じことが起きていると言います。その原因になっているのが、「知識社会化・リベラル化・グローバル化」と述べられています。その結果、世界は全体として豊かになっているにも関わらず、先進国の大半が上級国民と下級国民に分断されており、この格差拡大は止まることはありません。

つまり、上級国民と下級国民に分断は世界的に止まることのない流れであり、社会的に解決することは不可能なのです。

本書の読者の人たちは、一生下級国民として暮らさなければならないのかというとそうではありません。本書のあとがきの中で、個人として解決する明確な手段が明示されています。

 

日本が貧乏くさくなった平成の30年間

サラリーマン

平成の30年間をひと言でまとめるなら、「日本がどんどん貧乏くさくなった」です。

国民の豊かさを示す指標として一人当たり名目GDPがあります。

日本はバブル経済の名残で1990年代は世界ベスト5に常に入り続け、2000年には世界2位になりました。しかし、そこから順位を落とし続け、2018年には世界26位にまでに過去の栄光を忘れたかのように真っ逆さまに下落しました。

それに対し、マカオ、シンガポール、香港などに抜かれ続け、韓国にも抜かれそうな気配を感じます。

平成という時代は、日本がどんどんと貧乏になり、アジアの国々が力をつけていった30年になってしまったのです。

日本経済が低迷をつづけた30年のあいだに、グローバル化の恩恵を受けて、中国・インドを筆頭に新興国が国民のゆたかさを大きく伸ばしました。訪日観光客が増えて喜んでいますが、これはアジアの庶民にとって日本が「安く手軽に旅行できる国」になったからです。

すべての日本人が、まずはこの「不愉快な事実(ファクト)」を直視すべきです。

 

世界で1番会社を憎む日本人

日本がこれほどまでに貧乏くさくなってしまった要因が、会社への「エンゲージメント」の低さや「生産性」の低さだと言います。

世界22カ国のエンゲージメントレベルの調査では、世界1位のインドは評価点25%、2位メキシコが19%、アメリカは中間で評価点1%、日本は最下位のマイナス23%だったそうです。

また生産性でいうと、労働生産性はアメリカの3分の2しかなく、主要先進7カ国の中では、約50年間にもわたって日本は最下位です。

日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働生産性が低いということになります。これがかつての経済大国・日本の「真の姿」です。

会社も嫌い、労働時間は長い、なおかつ生産性も低い。これが日本の実態であり、このような状態ではどんどん日本が沈没していくことは誰の目に見ても明らかです。

しかし、こうした現実を私たちは認めないといけないのです。

 

不景気でも守られた団塊の世代たち

2020年11月末頃から、Twitterでは「#竹中平蔵つまみ出せ」というタグがトレンド入りし、竹中平蔵さんが「非正規雇用を増やした張本人」とバッシングを受けています。本書の中では、竹中平蔵さんのバッシングはしていませんが、日本の非正規雇用が増えていることに着目されています。

バブル前からバブル崩壊までの間、日本の正社員比率は46%から49%を推移しており、ほとんど変化がありません。その間にバブルが弾け、大手の金融機関が倒産するなど、日本経済に大打撃を受けたにも関わらずです。しかし、正社員比率がほぼ一定なのに、非正規雇用者は1982年の4%から2007年には12%へ3倍に増えています。

非正規雇用者になった大半は、今まで専業主婦をしていたが経済が傾き、共働きをしなくてはいけない人たちが正社員になれず、非正規雇用者として労働市場に流れでたのです。

また、見逃してはならないのが、20代男性の就労状況です。1982年から2007年の25年間で、正社員比率が75%から62%にまで落ちてしまっているのです。

バブル前夜からバブル崩壊までの25年間で、通説とは異なって「全体としては」年功序列・終身雇用の日本型雇用慣行は温存され、若い女性ではたしかに非正規が大きく増えたものの、その多くは元専業主婦でした。その一方で、若い男性で急激な「雇用破壊」が起きたことは間違いありません。

だとしたら、結論はひとつしかありません。平成の日本の労働市場では、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊することで中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのです。

平成という時代は、団塊の世代が既得権益を守り続け、女性と若い男性が割を食うという時代になってしまったのです。将来のある若い世代が未来を見失い、団塊の世代があぐらをかき続けている構造をしっかり認識した時に、今の若い世代はもっと自分の人生を考えて、立ち向かっていかなければならないのではないでしょうか。

 

令和は「団塊の世代の年金を守る」ための20年

貧乏

平成が「団塊の世代の雇用(正社員の既得権)を守る」ための30年だったとするならば、令和の前半は「団塊の世代の年金を守る」ための20年になる以外にありません。

令和という新しい時代が、若い世代の輝ける時代になれば良いですが、そう簡単には実現することが難しそうです。

若者から雇用を奪い、雇用が安定していた団塊の世代が引退することにより、若者の雇用が守られるようになるかといえば、そうはならないのが令和なのです。団塊の世代が引退し、年金を受け取る側に移ることで、若者たちの新たな役割は、団塊の世代の年金を守ることに変わっていくのです。

日本の若者たちは、いつにたっても自分の人生を歩むことができず、上の世代の面倒を見るために生きているといっても過言ではない状況が続いていきます。

選挙にいっても、若者の権利を守る政策をとる政治家に、団塊の世代の人たちは投票するわけがありません。人数の多い団塊の世代が、自分たちの既得権益を守ってくれる政治家に投票してしまえば、若者がどれだけ投票しても、勝ち目はないのです。

 

堀江貴文さんが東京改造計画といい、若者が輝ける東京を描いてくれましたが、ホリエモン新党が都知事選で惨敗し、小池百合子さんが再当選したのは記憶に新しいと思います。

 

未来を生き延びる2つの方法

ミレニアル世代_スマートフォン

団塊の世代の面倒を見続け、酷い仕打ちにあいつづける若い世代にも希望はあります。社会構造は変えることができなくても、個人として解決していくことはできます。

橘玲さんは、2つの選択肢を提示してくれています。

すべてのひとに向けた万能の処方箋はありませんが、今後のトレンドは大きく2つに分かれていくでしょう。

ひとつは、高度化する知識社会に最適化した人的資本を形成する戦略。エンジニアやデータサイエンティストなどの専門職はいまやアスリートと同じになり、10代で才能を見出され、シリコンバレーのIT企業などに高給で採用され、20代か遅くとも30代前半までに一生生きていけるだけの富を獲得するのが当然とされるようになりました。

(中略)

もうひとつは、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどで多くのフォロワーを集め、その「評判資本」をマネタイズしていく戦略で、SNSのインフルエンサーやユーチューバーなどがその典型です。高度化する知識社会では、テクノロジーが提供するプラットフォームを利用して、会社組織に所属することなくフリーエージェントとして自由な働き方をすることが可能になりました。

もちろん、年収数千万円のエンジニアも、有名ブロガーやユーチューバーもごく一部でしょう。しかし、私たちが生きている「とてつもなくゆたかな社会」では、「最先端の技術を理解してわかりやすく説明する」「新商品やサービスなど新しい情報をSNSで発信する」といったスキルでも、それなりの(あるいはひとなみ以上の)収入を得られるようになるでしょう。「知識経済」と「評判経済」は一体となって進化し、地球を覆う巨大な経済圏を形成しつつあるのです。

正直なところ、一つ目のシリコンバレーなどで活躍するということは、世界レベルの才能がないと不可能です。なおかつ、既に20代になってしまっている人たちには、実現できる可能性は0に等しいはずです。

しかし、二つ目の選択肢は、誰もが選び取ることが出来ます。いつまでも団塊の世代の尻拭いを続けるのではなく、今の時代にあった働き方をしていくことで不条理な日本で生き抜いていくことができるはずです。

 

まとめ

平成という時代は若い世代が団塊の世代に雇用を奪われ、令和は若い世代が団塊の世代の年金を守る時代になっていきます。

こうした構造的な社会問題に対して、的確な指摘をしてくれる人はなかなかいませんが、本書で橘玲さんはハッキリとリアルな日本の実態を教えてくれています。そして、あとがきでは今の若者たちが令和という残酷な時代を生き抜く方法を明確に提示してくれています。

上級国民と下級国民の格差は、世界中でどんどん広がっていきますが、本書は個人としてその壁を克服する答えを教えてくれる、とてもおすすめの本です。ぜひ、お手にとっていただきたいと思います。

 

橘玲さんの別の著書についても、ブログで紹介しています。特に『働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる』は、働き方に特化して書かれており、本書で下級国民から抜け出さなければと感じた方には、より詳しく働き方のヒントを教えてくれます。

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