【要約】LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略 (ライフシフト2)|リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット [書評]

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LIFE SHIFT2(ライフシフト2)―100年時代の行動戦略_アイキャッチおすすめの本
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2006年10月に、日本で発売されたちまち大ヒットとなった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』。

約5年の月日を経て、その続編にあたる『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』が2021年10月に発売されました。

 

「人生100年時代」という強烈なメッセージを世界中に広めた前作では、3ステージからマルチステージの人生への変革、有形資産よりも無形資産の重要性など、一冊でたくさんのヒントを与えてくれました。

本書では、前作以上に詳しくこれからの時代の「変化」や「働き方」、「生き方」、「企業、国のあるべき姿」などについて考えることができる一冊です。

2021年〜2022年の必読書の1つと言っても過言ではありません。

そんな『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』の要約と書評の記事です。

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LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略|リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット

LIFE SHIFT2-100年時代の行動戦略_表紙

ご紹介する本は、リンダ・グラットン氏、アンドリュー・スコット氏の『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』です。

タイトルの通り、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』の続編にあたります。

原書は『The New Long Life: A Framework for Flourishing in a Changing World』で、そちらの翻訳版になります。

経済学が専門のアンドリュー・スコット氏と、心理学が専門のリンダ・グラットン氏の知見を組み合わせることで、世界中の人々が抱えている不安を払拭してくれる内容です。

 

ライフシフトシリーズ

本書を読む前に、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』をお読みいただくことをオススメしますが、もちろん読んでいなくても大丈夫です。

【要約】『LIFE SHIFT(ライフシフト)』100年時代の人生戦略|リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット [書評]
人生100年時代ということを世界中に広めた注目作である『LIFE SHIFT : 100年時代の人生戦略』をご紹介しています。これから日本は世界で最も早く平均寿命が100年の国に到達することでしょう。そうした時代を生き抜くヒントが満載です。

 

オリジナル版が、分厚くて難しいという方は、『超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略』や、漫画版の『まんがでわかる LIFE SHIFT』も、オススメです。

【要約】超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略[書評・感想]
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットの共著の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』の超訳版をご紹介しています。オリジナル版を断念してしまった方、初めてライフシフトにチャレンジしたいという方におすすめです。

 

LIFE SHIFT2(ライフシフト2)の登場人物

本書では、前作に引き続き架空のキャラクターが登場しており、難解な本を理解しやすくしてくれています。

私たち日本人をテーマにしたキャラクターも描かれており、世界的に見てもこれから日本人の人生が激変してくことが予想されていることがわかります。

  • ヒロキとマドカ:日本人の20代半ばのカップル。
  • ラディカ:インドの20代後半の女性。フリーランスで「ギグ・エコノミー」の恩恵を受け自由に暮らす。
  • エステル:ロンドンの30歳のシングルマザー。安定した正規雇用に就きたい。
  • トム:アメリカの40歳のトラック運転手。自動運転などのテクノロジーで自分の職に不安を感じる。
  • イン:シドニーの55歳の会計士。業務の自動化により、会計士を解雇される。
  • クライブ:イギリスの71歳の元エンジニア。引退したが、老後資金を考えると復職したい。

 

LIFE SHIFT2(ライフシフト2)の構成

本書は、第1部から第3部の3部構成になっています。

第1部では、テクノロジーの進化と長寿化が進むことにより、世の中が変化していくことで私たちの人生にどんな選択肢が生まれるのかについて考察されています。

本書の大きなテーマである、テクノロジーと長寿化の前提を確認できるので、前提知識がなくても安心です。

第2部では、「物語」「探索」「関係」の三つの要素を軸に、長寿の時代に適応するために、私たちが取るべき行動について論じられています。

第3部では、教育機関、企業、政府などがこれからどのような転換をしていくべきなのかという、より大きな視点で、世界的な潮流であるテクノロジーの進展と長寿化について対策が考察されています。

 

本書では、前作と比べて全体として、キャッチーなフレーズは少なくなっており、より実践的な内容に重きを置いた構成になっています。

前作に書かれていた「人生100年時代」、「3ステージからマルチステージへ」、「生産性資産、活力資産、変身資産の3つの無形資産」といった世の中に衝撃を与えるようなキーワードは、本書の中では、あまり出てきません。

しかし、これらのキーワードは前作に引き続き本書の中でも度々出てくるため、いかに前作が世の中に与えたインパクトが大きいかを感じることができます。

 

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第1部 人間の問題

テクノロジーの進化

テクノロジーの進化

1965年に、半導体大手インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアが示した「ムーアの法則」という言葉自体は、多くの人が聞いたことがあると思います。

現在、それ以外の下記の3つの法則を足した4つの法則の効果が組み合わさり、AIとロボット工学が人類史上類を見ないスピードで進歩をしているのです。

これにより、新しい仕事、新しい産業、新しい価値観が生まれ、それと同時に自分たちの仕事がなくなるのではないかという恐怖が生まれています。

 

  • ムーアの法則:コンピューターの処理能力が18ヶ月間に2倍のペースで上昇していく法則
  • ギルダーの法則:通信網の周波数帯域幅は6ヶ月で2倍になる法則
  • メトカーフの法則:ネットワークの価値は接続しているユーザーの数の2乗に比例する法則
  • ヴァリアンの法則:活用できるテクノロジーが多彩であれば、組み合わせて有益なものを生み出せる可能性が高まる法則

 

このようにテクノロジーが加速度的に進歩していくと、それに伴い多くの仕事が奪われるのではないかという議論が巻き起こります。

今、多くの人がその可能性を感じている職業の一つが、車の運転するを職業についているタクシードライバーやトラック運転手などです。

アルファベットの自動運転車「ウェイモ」は、2018年10月時点ですでに1000万マイル(約1600万キロメートル)の公道での試験走行を実施しています。

アメリカでは運転手の職についている400万人のうち、完全な自動化が実現した場合には雇用が3分の1に減るという予測もされています。

サービス業では、さまざまな用途でロボットを活用できる可能性がある。日本の「変なホテル」はロボットホテルと称していて、ロボット料理長の「アンドリュー」が腕を振るってお好み焼き(日本版のオムレツのような料理)をつくり、ほかのロボットたちがフロント業務や荷物運びをおこなう。一方、アメリカのカリフォルニア州では、ロボットの「サリー」がサラダをつくり、「フリッピー」がハンバーガーを焼き、「ボトラー」がホテルの客室にタオルやアメニティーを届けているし、イタリアでは、マカー・シェイカーという会社がロボット・バーテンダーの開発を目指している。

テクノロジーは、人間のさまざまな用事を解決するために休みなく前進し続けているのだ。 2016 年、宅配ピザのドミノ・ピザはニュージーランドで史上初のドローン(小型無人機)による配達をおこなった。ニュージーランドのファンガパラオアに住むカップルのもとに、ペリペリチキン・クランベリーピザを届けたのだ。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

実際に、本書の中で紹介されているテクノロジーのYouTubeを下記に紹介します。

実際に、動画で見ることで、よりこれらのテクノロジーの可能性を感じることができるはずです。

変なホテル

 

サリー

 

フリッピー

 

ボトラー

 

ドミノ・ピザ

 

このようにテクノロジーの能力が高まり、テクノロジーを活用する人たちの目的が変わって、人間の労働の代替と増強が進む結果として、仕事の性格は大きく変わる。その影響は、レジ係やトラック運転手にも、弁護士やファイナンシャル・アドバイザーにも及ぶ。当然、雇用が失われるリスクは避けられない。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

こうした、雇用、働き方が変わっていく未来に対して、私たちがどのように備えていくべきなのかについては、第2部以降で紹介されています。

 

テクノロジーについて、さらに詳しく知りたいという方は、下記の3冊の本がオススメです。

 

長寿時代の訪れ

長寿時代の訪れ

テクノロジーの進歩は、私たちに大きな変化をもたらすことは間違いありませんが、それ以上に影響があるのが長寿化の進展です。

ここ100年以上、ベストプラクティス平均寿命*は、10年間に2~3年という驚異的なペースで上昇してきた。平均すると、それぞれの世代が前の世代よりも6~9年長生きしている計算になる。

(中略)

いま先進国で生まれた子どもは、100歳以上生きる確率が50%を超す。もし平均寿命の上昇ペースが半分に落ちたとしても、いま生まれた子どもが100歳まで生きる確率は30%を上回る。年齢層別に見た場合、いま世界で最も急速に人口が増えているのは、100歳以上の層なのである。

*ベストプラクティス平均寿命とは、それぞれの年の平均寿命世界1位の国の平均寿命のこと

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

今後、人々の寿命が伸びていくと、かつて以上に高度な教育を受け、自分のキャリアを追求していく人たちも増えていきます。

そうすると子どもは財産として見られていた時代から、子どもが経済的な重荷と感じてしまう人たちも増えてしまいます。

子づくりに関する選択は、女性の教育レベルの影響を強く受けているといいます。

正式な教育を全く受けていない女性は障害で平均7人の子どもを産みますが、初等教育を受けた女性は4人、中等教育まで受けた女性は2人の子どもを産むという研究結果があります。

国連は、21世紀末までに1家庭の子供の人数は2.5人から2人までまで減ると予想しています。

子どもの数が減り、長生きする人が増えていけば高齢者の割合が高まり、世界の平均年齢も高まっていきます。

1950年時点の世界の平均寿命は24歳でしたが、2050年には36歳になるとの予想もあります。

 

長寿化がもたらすもの

こうした世界的な長寿化は私たちの人生に何をもたらすのでしょうか。

本書の中では、大きく3つのことが指摘されています。

  1. 老後資金の確保が困難になる
  2. 医療の提供の限界を超える可能性がある
  3. 世代間で不公平が生じる

65歳以上の人たちの人口が増えていくと、その国の経済成長は減速していき、十分な収入を確保することが難しくなっていきます。

老後の生活資金のために、それぞれの国では、公的年金制度などがありますが、維持していくことが可能かについて疑問を持たれているのは決して日本だけではありません。

 

60代後半以降の人たちは、医療費支出が急増していきます。

オランダでは、80歳以上の医療費が1人あたりGDPの3分の2を占めているという、危機的状況の国もあります。

人々の健康状態の改善や医療のあり方から変えていく必要があります。

 

今の高齢者の生活を支えるために、将来世代が負担を被るということも問題になります。

公的年金制度などを維持していくために、年金の給付額の削減や税負担を増加させるなどのことが行われると、今の高齢者は得をして、今の若者たちが高齢者になる頃にはほとんど保障を受けられないという不公平さが出てくることも考えられます。

こうした世代間の公平性を維持していく必要があります。

 

暗い老後がイメージされますが、明るい老後に変えていき、長い人生をより良いものにしていく方法が、第2部、第3部で描かれています。

 

長寿化について、さらに詳しく知りたい方は、『未来の年表』シリーズがオススメです。

 

好奇心をもって未来を切り開くこと

好奇心をもって未来を切り開くこと

動物がもっておらず、私たち人間だけがもっているスキルの最もたるものは、将来起こりうる様々な結果を予想して、複雑で難しい問題の解決策を見つける力だといいます。

しかし、実際に未来を予想することはとても難解で、確実に未来を見通すことは不可能です。

こうした不確実な状況の中で、大切なことは好奇心をもち、未来への行動をです。

 

未来に目を向け、ものごとの本質を見極めようとしても、未来を確実に予測することはできないからだ。そうした不確実な状況においては、好奇心をいだくことの重要性がますます高まる。この点は、ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジーノの心理学的研究からも明らかだ。

ジーノの研究によれば、人々が不確実な未来と厳しい外的環境に素早く対処するうえでは、好奇心の果たす役割が大きいという。好奇心の強い人は創造的な解決策に到達しやすく、(これはきわめて重要な点だが)型にはまった思考や誤った思い込みに陥る可能性が比較的小さいのである。

(中略)

好奇心をもち、未来を見据えて想像力を発揮することは確かに重要だが、社会的開拓者であるためには、それだけでは十分でない。行動を起こす決意と勇気も同じくらい重要だ。テクノロジーが進化し、長寿化が進展するなかで、旧来の働き方、キャリアの道筋、教育や家族のあり方は、ますます持続不可能に見えはじめている。そこで、これまでの行動を変える必要があるのだ。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

多くの人が知っているように、資本主義という世界は、人々を豊かにした一方で、とてつもない格差を生み出しました。

人類歴史のほとんどの期間、平均的な年間の所得は90〜150ドル程度でした。

それが、18世紀以降、生活水準は向上し、1800年には年間所得は200ドルになり、1900年には700ドル、2000年には6500ドルに達し、この流れはまだ続きそうです。

しかし、2020年末には、世界ではトップの富裕層たった10人が、世界の下位半数の40億人とほぼ同等の富を独占するようになりました。

プリンストン大学の歴史学者ウォルター・シャイデルの調査では、人類歴史で不平等が緩和されたのは、戦争、革命そのほかの破壊的事態が起きた時だけだと言います。

今回の新型コロナウイルスの蔓延は、世界の不平等を是正するほどの威力はなかったことは誰の目から見ても明らかです。

 

世界の不平等については、橘玲さんの『無理ゲー社会』の中でも詳しく描かれています。

 

本書の中では、人間としてのこれからの時代の可能性を開花させるために、3つの要素が重要だと説かれています。

  • 物語:自分の人生のストーリーを紡ぎ、そのストーリーの道筋を歩むこと。それは、人生に意味を与え、人生でさまざまな選択をおこなう際の手引きになるような物語でなくてはならない。
  • 探索:学習と変身を重ねることにより、人生で避けて通れない移行のプロセスを成功させること。
  • 関係:深い絆をはぐくみ、有意義な人間関係を構築して維持すること。

第2部では、この「物語」「探索」「関係」について、詳しく紹介されています。

 

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第2部 人類の発明

物語 – 自分の人生のストーリーを紡ぐ

物語 – 自分の人生のストーリーを紡ぐ

私たちが人間として花開いていくための土台の要素が、人生に意味を与えられるストーリーを紡いでいく能力であると言います。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』で書かれていたように、100年時代の人生になると、従来の「教育→仕事→引退」という3ステージでは足りなくなり、より多くの移行を繰り返し、マルチステージの人生を送る必要が出てきます。

そのために、本書の中では、マルチステージの人生をより良いものにしていき自分自身の最高の人生という物語を紡いでいくために、いくつか考え方を変えていく必要があると言われています。

変えるべき考え方は、「年齢」「時間」「仕事」の3つです。

 

年齢に対する考え方を変える

人生が長期化していくと、年齢というものは全く当てにならなくなります。

例えば、日本で言えば、サザエさんに出てくる磯野波平さんは、設定上54歳ですが、舞台は1950年代の日本です。

現在の54歳はもっと若々しいですし、54歳の人を思い浮かべる時に波平さんのような人は思い浮かべないはずです。

実際には、生物学的年齢(肉体がどれくらい若いか)、社会的年齢(社会でどのように扱われているか)、主観的年齢(自分がどのくらい老いている、もしくは若いと感じているか)といった概念も存在する。年齢の概念が単一でないことは、「あの人は年齢の割に元気に見える」「もう立派な年齢なんだから、そんなことをしては駄目だよ」「今日は年齢を感じずにいられないよ」といった表現にもあらわれている。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

 

最近では、世界的に老いに関する味方は変わってきています。

60歳〜69歳を初老者(ヤング・オールド)、70〜79歳を高齢者(オールド・オールド)、80歳以上を超高齢者(オールですと・オールド)と呼ぶ動きも出てきています。

私たちの物語を紡いでいくときに、大切なことは従来の年齢という数字だけを見て、自分の人生のフェーズを判断してはいけないということです。

 

時間に対する考え方を変える

人は自然と近い将来のことを重要に考え、遠くの時間を軽視してしまう傾向があり、行動経済学では「現在バイアス」と呼ばれます。

人生が100年という長期に及んでいくことを考えると、従来のように若いうちに楽しいことを全てやろうという考えは意味をなさなくなってきます。

社会に出てから、勉強をしなおしたり、一年ゆっくり旅行を楽しんだり、次の職への移行期間が生まれたりという過ごし方が重要になります。

人生が長くなれば、それだけ未来の日々が長くなるので、自分の人生の選択肢を考える際は、未来に得られる恩恵を重んじることが理にかなっている。忍耐心を発揮し、未来の恩恵を過小評価しないように留意すべきなのだ。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

ハーバード大学の経済学者センディル・ムッライナタンとプリンストン大学の心理学者エルダー・シャフィールは、「トンネリング」と呼ばれる現象があると言います。

重要な資源が不足していると、その不安に支配されて、直近のことしか考えられなくなるということです。

 

不足しがちな資源で代表的なものが、お金です。

お金がなくなると、人はどうしても目の前のお金を確保しようということで頭がいっぱいになり、長期的な自分の人生の物語を考えられなくなります。

そのため、いざという時のために、お金を蓄えておく必要もあります。

 

本書の中では、次の実験が紹介されています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のハル・ハーシュフィールドらの研究では、4000人の人たちに次の問いを投げかけた。「あなたが大学教授だとしましょう。よその州の大学で週末のセミナーに出講してほしいという依頼が舞い込みました。けれども、家にはまだ生まれて間もない赤ちゃんがいます。3カ月前に生まれたばかりの女の子です。セミナーの報酬は、不在中の託児サービスの料金をまかなうのに十分なものです。しかし、出講すれば、赤ちゃんと週末を過ごせなくなります。あなたは、どのような選択をしますか」

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

多くの人は、赤ちゃんと一緒に過ごしたいと思いながらも、セミナーへの出席を選択してしまうと言います。

しかし、幸福度が高くなるのは、間違いなく赤ちゃんと一緒に過ごすことです。

これも、早い段階でお金にゆとりをもっていれば、解決できる問題なのです。

 

仕事に対する考え方を変える

ある調査によれば、2030年までに、7500万~3億7500万人が職業を変えざるをえなくなるという推計があります。これは、世界のすべての働き手の14%にも当たります。

新しいテクノロジーが生まれれば、それだけ新しい仕事が生まれると楽観的に考える人もいます。

しかし、ノーベル経済学賞を受賞した、ポール・クルーグマンは、テクノロジーの進歩が生活水準を向上させるまでには「数世代」の期間が必要だと言います。

つまり、職を変えざるを得ない14%だけでなく、残りの86%の人にもマイナスの影響が出る可能性は高く、職を失わないからといって、安心はできないのです。

 

職について、考えていくときに、大切なことは、職(ジョブ)と業務(タスク)を分けて考えることだと言います。

機械が現在と未来の職に及ぼす影響を正しく理解するためには、職(ジョブ)と業務(タスク)をわけて考える必要がある。機械が担うのは業務で、ひとつの職はいくつもの業務で構成されている。あなたの職が消失のリスクにさらされているかどうかは、あなたがその職でどのような業務を実行していて、それらの業務のなかのいくつが自動化される可能性があるかによって決まる。自動化と雇用消失の関係を研究した研究者たちは当初、ひとつの職は少数の明確な業務によって構成されていると考えていた。それを前提にすると、機械の進化により影響を受ける職の数はきわめて多いと推測される。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

職は、なくならなかったとしても、職を構成している業務の一部がAI化・自動化されることにより、日々行う業務が変わり、職として求められる能力なども変わっていく可能性があるということです。

全体の職の60%は、業務の3分の1以上を自動化しやすいものが含まれていると言います。

 

自動化を妨げる4つの要因を考えながら、職を考えていく必要があります。

  1. 非定型的な業務が占める割合が大きいこと
  2. 付加価値の高い業務に移行できる可能性が十分あること
  3. その色の自動化を妨げるような環境があること
  4. 自動化が費用対効果の面で得策ではないこと

しかし、これらのことが満たされていても、10年後には仕事のあり方自体が変わっている可能性も高いため、安心はできません。

 

新しい働き方

現在「仕事」のイメージは、安定したフルタイムの職で働くということです。

これからキャリアの流動性が高まっていくと、フルタイム以外の職で働くことが増えてきます。

実際に本書の中で紹介されているラディカはフリーランスで働いており、フリーランスで「ギグ・エコノミー」の形で働いています。

雇われない働き方をしている人たちの約70%の人たちは、会社に行かず、好きな時に好きな仕事をすることに満足しており、フルタイムの会社員の人たちよりも仕事への満足度は高くなっています。

雇われない働き方をどのように感じるかは、その人がどのようなモチベーションをいだいていて、どのような理由でそうした働き方をしているかによって変わる。30%程度の人は、ラディカのような「フリーエージェント型」だ。自由と柔軟性に魅力を感じて、そのような働き方をしている。そして、40%はいわば「カジュアル型」。主たる収入源は別にあって、収入を増やすために副業をしている人たちだ。この2つのタイプの人たちはたいてい、この働き方に満足している。一方、残りの約30%は「不本意型」だ。本当はフルタイムで働きたいと思っている人たちである。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

「不本意型」でフルタイムの仕事ができないことは絶対に避けるべきですが、自分が「フリーエージェント型」や「カジュアル型」で働きたいと思ったら、十分に満足度の高い仕事ができる可能性があるのが現代です。

「ギグ・エコノミー」については、数年前からこれからの時代の主流な働き方になるだろうと予測されており、年々取り組む人たちが世界的に増加しています。

これからの働き方を考える上で、絶対に検討しなければならないのが「ギグ・エコノミー」としての「フリーエージェント型」の働き方です。

 

働き方については、下記本の中でより詳しく紹介されています。

本書の著者の一人であるリンダ・グラットンさんの『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』は中でも一押しです。

 

良い人生とは

より良い人生を考えたときに、切っても切り離せないのが、資金を確保することです。

 当然、お金の問題を軽く考えるわけにはいかない。100年ライフの時代には、資金を確保することがひときわ重要になる。不自由のない引退生活を送り、健康的な暮らしを実践し、生涯学習と休息の期間の生活を支えるためには、お金が不可欠だ。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンとダニエル・カーネマンが提唱した「年間所得が7万5000ドルを超えると、所得がそれ以上増えても幸福感は高まらないという」という研究をご存知の人も多いと思います。

しかし、この調査には、続きがあります。

裕福な人ほど概して生き甲斐を感じていることがわかったのです。

この研究の結論は、「所得が高いと、人生の充実感は高まるが、日々の幸福感は高まらない。一方、所得が低い人は、人生の充実感が低く、情緒的な幸福感も低い」ということです。

つまり、金があれば幸せになれるとは限らないが、金はよい人生の重要な柱であり、所得が少ないと幸せにはなれないということです。

 

本書の「物語」については、下記の言葉で締め括られています。

資金計画が人生のストーリーを牽引するだけでなく、人生のストーリーが資金計画を牽引するようにもすべきなのである。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

まずはどのような人生の「物語」を歩んでいきたいのか、価値観を明確にすること。

そして、その人生を実現するためには、どの程度の収入が必要で、どの程度の資産が必要なのか。

それを得るためには、どのような働き方が必要なのかを明確にしていくという順番が大切なのでないでしょうか。

 

自分の「物語」を紡いでいくために、価値観を明確にしたいという方は、下記の本がオススメです。

 

探索 – 学習と移行に取り組む

探索 – 学習と移行に取り組む

人生が長期化し、マルチステージの人生を歩んでいく私たちは、自分の実現したい「物語」を明確にした後にすべきは、探索をして、理想の人生を実現するための学習と移行をしていくことです。

20代と言えば、昔は家庭とキャリアを築く時期と位置づけられていた。しかし、いまは違う。20代は、マルチステージの長い人生に向けて、その土台となるスキルと足場を充実させる時期になっているのだ。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

 

生涯にわたって学び続ける

「探索」で重要なことは、一生学び続けるという前提を持つことです。

学生時代は、「学ばない」という選択をしない限り、学校に行けば勝手に学ぶことができました。

しかし、大人になると、「学ぶ」とう選択をしない限り、何もしなければ学習はできません。

自分で、学ぶという姿勢を持ち続けないといけない時代になったのです。

 

また大人の学習で大切なことは未知のことについて馴染むことよりも、古い思考か行動を捨てること(「学習棄却」)が大きなウェイトを占めると言います。

新しい環境に飛び込み、今までの既成概念や凝り固まった古い思考を捨てる勇気が必要です。

 

一人で学習をしようと思っても、長続きしなかったり、何を勉強したりしたらいいかわからないということもあると思います。

大人の学びでは、一緒に学ぶコミュニティを見つけていくことが、大きな助けになることもあります。

つらい日々を乗り切るうえで支えになっているのは、一緒にコーチングを学ぶ人たちのグループだ。同じような思いをいだいている人も多く、互いに支え合って学習に取り組んでいる。学術的研究によれば、大人の学びには、一緒に学ぶ仲間たちで構成される「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践共同体)」が大きな役割を果たせる場合があるとわかっている。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

 

関係 – 深い結びつきをつくり出す

関係 – 深い結びつきをつくり出す

人間関係を深めるために投資しなければ、移行の回数が増える結果として人生が細切れになる危険が出てくると言います。

人間関係がなくなっていくと、自己の意識とアイデンティティを見失い、漂流状態に陥りかねないのです。

 

マルチステージの人生になっていく際に重要なことは、前のステージで育んだ人間関係を維持しながら、その人間関係に投資を続けるために、努力していくということです。

人間関係は、家族でない限り、放っておけば、どんどん薄れていきます。

人間関係を維持していく努力を、自ら行っていく必要があるのです。

 

家族

人生が100年になっていくと当然家族との関係性も変わってきます。

現在、結婚の年齢が遅くなっていることは世界的な潮流です。

1980年代、アメリカ人女性の結婚年齢の中央値は22歳でしたが、現在は28歳に上昇しています。

1970年代の日本では、50歳以上の男性の未婚の人は50人に1人でしたが、現在では4人に1人という割合になっています。

 

結婚の年齢が遅くなるに伴って、子供を作る年齢も遅くなっています。

第一子を出産する平均年齢は、日本は31歳、アメリカでは27歳、イギリスでは20歳未満の女性の出産率よりも40代女性の出産率の方が高くなっています。

こうしたことから、100年の人生の中で、いつ結婚し、いつ子供を出産するのか、今まで以上に柔軟な考えを持っていく必要があります。

 

コミュニティ

今まで以上に人生の中で重要な役割を果たすようになるのが、コミュニティでの人間関係です。

特に日本では、会社がコミュニティとしての役割を果たしていたので、家族と会社での人間関係が人生の中での人間関係のほとんどの部分を占めている時代もありました。

また今まではコミュニティは対面での繋がりが多かったですが、これからはバーチャルな交流をしていくということも増えていくことが予想されます。

オンラインで買い物をする代わりに地元の商店を利用したり、古くからの友人や同僚ではなく、近所の人たちと読書会を開いたり、オフィスのそばにあるスポーツジムではなく地元のジムに通ったりしてもいい。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

 

コミュニティに参加することのメリットには、健康的に長く生きるようになれるということもあります。

コミュニティに深く関わっている人は、長生きする確率が高く、生き甲斐をもつことによりアルツハイマー病の発症リスクと死亡率も下がることがわかっています。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

 

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第3部 人間の社会

第3部では、企業、教育機関、政府の抱える課題と、それに対する具体的な提言がなされています。

第3部で書かれている内容のほとんどは一個人が対応できる問題ではないので、簡単にだけご紹介していきます。

詳しく知りたい方は、ぜひ本書をお読みになられてください。

 

企業の課題

企業の課題

今までの3ステージの人生では、「エイジ、age(=年齢)」と「ステージ、stage」が結びついていたため、「◯歳くらいなら、課長」のような形で仕事が決まっていました。

しかし、これからはエイジとステージの結びつきを企業が無くしていく必要があります。

そこで考えられる対策として、次のことなどがあげられています。

  • 入社年齢の多様化
  • 新しい退職の形の導入
  • 男性の子育て支援
  • 介護者の支援
  • 柔軟性を重んじる文化の形成
  • 学びの支援
  • 年齢差別の撤廃

 

教育機関の課題

教育機関の課題

今まで教育は、社会に出る前に行われるものでしたが、これからの時代は社会に出た大人も教育を受ける必要があり、教育精度も変わっていく必要性があります。

煎じ詰めれば、教育の目的は、人々に人生の準備をさせることにある。とりわけ、職に就く準備を整えることが次第に重視されるようになっている。これは、労働市場でテクノロジーと教育が競争関係にあるためだ。ある人の教育レベルがテクノロジーとの競争に勝てていれば、その人の雇用と所得は安泰と言える。

19世紀後半から20世紀前半にかけて、世界の国々が義務教育制度を導入した主な理由もこの点にあった。テクノロジーの進歩に後れを取らないように、国民を教育する必要性を感じたのである。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略

学校教育のあり方も、テクノロジーの進歩ともに変わってきており、これからも変化していくべきです。

 

教育機関へは、次のようなことが求められています。

  • 大人の学習ニーズを重視する
  • 柔軟性と自在性を高める
  • 年齢による区別をしない
  • 学位中心主義からの脱却
  • 教育機関の誇大広告の撲滅
  • 積み上げ型で持ち運び可能なスキル証明
  • 誰もが学べる仕組み作り
  • テクノロジーの活用

 

政府の課題

政府の課題

公的年金がなくなるのではないかという議論は、決して日本だけで言われていることではなく、世界中の人たちの寿命が伸びることに伴い各国共通の課題になりつつあります。

社会保障制度などをいかに維持していくか、国民が長い人生を幸せに生きるための土台づくりが各政府に求められています。

 

  • 「職」ではなく、「人」を守る
  • 不平等の是正
  • 「劣悪な雇用」から国民を守る
  • 悪い経済的結果を防ぐ
  • 健康面での悪い結果を抑制する
  • 将来必要となるスキルを身につけるのを助ける
  • 健康的に年齢を重ねることを後押しする
  • 長寿経済を築く
  • GDPだけに囚われない思考
  • 政治システムを作り替える

 

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おわりに – 未来へ向けて前進する

本書の最後には、著者のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットから、5つの行動を取るべきというアドバイスが送られています。

  • 先手を打つ。私たちはいま、大きな変化の時代を生きている。変化の影響を逃れられる人はいない。
  • 将来を見据える。あなたがいま何歳だとしても、残されている人生は、過去のどの世代よりも長い。
  • 「ありうる自己像」を意識する。人生が長くなり、多くの移行を経験するようになれば、あなたの「ありうる自己像」の選択肢は大きく広がる。
  • 可変性と再帰性を意識する。あなたがどのように老い、どのような将来の選択肢を手にするかは、いまあなたがどのように行動するかによって決まる。
  • 移行を受け入れる。自発的な移行にせよ、不本意な移行にせよ、人生を大きく変えることはときとして難しい。

 

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まとめ

リンダ・グラットン氏、アンドリュー・スコット氏の『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』の要約をご紹介してきました。

原本がかなりのボリュームなため、要約と言いつつもかなりの長文になってしまいましたが、本書のエッセンスを纏めました。

 

前作に続いて、人生100年時代をより良く生きていくための対策が具体的に書かれており、今何歳であろうとお手に取っていただきたい一冊です。

そして、1人でも多くの方が、100年の人生を幸せに過ごしていただくことを願っております。

 

前作の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』や、漫画版の『まんがでわかる LIFE SHIFT』や超訳版の『超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略』もおすすめです。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』と『超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略』については、ブログでも紹介しています。

 

【要約】『LIFE SHIFT(ライフシフト)』100年時代の人生戦略|リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット [書評]
人生100年時代ということを世界中に広めた注目作である『LIFE SHIFT : 100年時代の人生戦略』をご紹介しています。これから日本は世界で最も早く平均寿命が100年の国に到達することでしょう。そうした時代を生き抜くヒントが満載です。

 

【要約】超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略[書評・感想]
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットの共著の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』の超訳版をご紹介しています。オリジナル版を断念してしまった方、初めてライフシフトにチャレンジしたいという方におすすめです。

 

 

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LIFE SHIFT2(ライフシフト2)と一緒に読みたい本

最後に、本ブログの途中で紹介した、あわせて読みたい本をご紹介します。

ブログ記事で紹介しているものも、多数あるのでブログのリンクもあわせて記載しております。

 

第1部 人間の問題とあわせて読みたい本

テクノロジーについて

2025年を制覇する破壊的企業