誰もが一度は「宝くじで3億円当たったらいいな」や「宝くじに当たったら一生遊んで暮らせるのに」と考えたことがあると思います。
町の至る所に宝くじ売り場が目につき、夏の恒例行事「サマージャンボ宝くじ」や年末の「年末ジャンボ宝くじ」などの大型の宝くじが発売される際は、高額当選しやすいと噂される宝くじ売り場に何日も前から長蛇の列ができ、ニュースなどでも報道がされています。
日本人はお金を卑しいものと思っているとよく言われますが、こうした光景を見ると、多くの人が宝くじの当選を夢見ているのが現実であり、心の中ではみんな楽をしてお金を手に入れたいと感じており、お金持ちになりたいという気持ちがあることを否定できません。
2020(令和2)年度の第862回全国自治宝くじの発売総額1,320億円であり、1枚300円であることから4億4000万枚が販売されました。もし全ての宝くじが売れたとすると、日本人が平均3枚以上の年末ジャンボ宝くじを購入した計算になります。
総務省が発表しているデータによると、2019(令和元年)年度の宝くじの売上高は、約7,931億円とやや減少傾向にあるものの、依然として日本人が宝くじ好きでお金持ちになることを望んでいることが明らかです。
宝くじの売り上げがやや減少傾向にあるものの、最高当選金額は年々増加傾向にあり、2020年の年末ジャンボ宝くじでは、1等が7億円で22本用意され、前後賞がそれぞれ1億5,000万円で44本と、合計で10億円を得るチャンスとして大々的に売り出され、この10億円を得ることができる22人の枠を求めて多くの人が売り場に長蛇の列を作りました。
もし、仮に300円で1枚だけ購入し、1等が当選したら、なんと250万倍という驚愕のリターンを得ることができるのです。
2016年1月14日には、アメリカ最大規模の宝くじである「パワーボール」で、約15億ドル(約1,770億円)の大当たりが、出たことが一大ニュースとなりました。これはアメリカ史上最高額であり、日本の宝くじとはケタ違いの金が掛けられています。少なくとも3枚の当たりくじが販売されたとのことで、人生が一変するような大金を一般人が手にしました。

↑一瞬で人生を一変させる魔力のような宝くじ
2015年12月31日にTwitterでは、1等を当選させた本人が写真付きで投稿をし、拡散されました。
その直後から、この方を心配するTweetやTweetの削除をオススメするようなTweetが多数投稿されました。
多くの人が宝くじで当選することを夢見るのに関わらず、実際に宝くじで当選した人は心配されるということはよくあることです。また、宝くじの高額当選と共につきまとうのが、自己破産や家庭崩壊といった言葉たちです。宝くじで高額当選をして、幸せな人生を送ったという話を聞いたことがあるという人はほとんどおらず、宝くじという夢のようなシステムの裏に大きな暗い現状が見え隠れします。

↑宝くじの光の陰には闇がある
宝くじは愚者の税金
ホリエモンこと堀江貴文さんは、宝くじのことを「愚者の税金」と呼び、反感を買いましたが、決してその例えは間違っていないように感じます。

マッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍し、世界を代表するコンサルタントであり、ベストセラービジネス書作家の勝間和代さんは、
宝くじは、買った瞬間に「半分お金が蒸発する」債券なので、私は絶対に買いませんが、それでも買う人が後を絶たないから、国の商売として成り立っているわけです。私はあれは「隠れ税金」だと思っていて、ある意味、統計や数学に詳しくないか、詳しくても気にしない人からお金を搾取するしくみなので本当に良くないと思っている
勝間 和代│宝くじの夢の正体は「変動幅」
と言っています。宝くじは、「愚者の税金」なのか、それとも最高の収入システムなのか、考えてみたいと思います。
換金率の低さ
宝くじが愚者の税金と呼ばれる所以の一つに、宝くじの換金率の低さがあります。
言い換えると、運営元である胴元が宝くじの売り上げのかなりな部分を得ているということです。
換金率のデータは、国から公式に発表されており、その他の競馬や競艇などと比べ、換金率の低さが際立ちます。
宝くじは買えば買うほど、平均へ回帰していくため、宝くじを買うということは時間と労力をかけてわざわざ所持金を半分にするという行為なのです。
これが勝間和代さんが「半分お金が蒸発する」債券と言っている理由になります。
当選率の低さ
宝くじの当選率の低さもしっかりと認識しなければなりません。
当選金額も高く、売上が日本で一番大きいジャンボ宝くじですが、このジャンボ宝くじで1等に当選する確率は、2020年時点で2,000万分の1しかありません。いくら1等の当選金が数億円でもこの確率を知ると当たる確率は、ほぼゼロに思えてしまいます。
何故2,000万分の1の確率になるかというと、計算は簡単です。
通常ジャンボ宝くじは、100,000番~199,999番までの10万通りを1組として、01組から100組までを1ユニットとして販売しているからです。10万通り×200組で、1,000万通りあり、1等はこの中に必ず1枚含まれているため、2,000万分の1の当選確率になります。
今までは1ユニットが1,000万枚で、当選確率が1,000万分の1でしたが、史上最高額の1等の当選金が7億円となった2015年の年末ジャンボ宝くじからは、1ユニットが2,000万枚に変更されており、当選確率が2,000万分の1と今までの半分になってしまいました。
史上最高額の当選金という大々的な告知の裏側には、当選確率の大幅な減少が隠されており、売り上げUPのために大胆な戦略をとったことがわかります。
しかし、実際に購入する人のほとんどが、このようなユニットの変更に気が付くことがなく、ただ当選金額が史上最高という言葉に夢をいただき、購入していることでしょう。
2020年の年末の「年末ジャンボ宝くじ」(第862回全国自治宝くじ)の各当選金額と本数、確率は下記の通りになります。
2020年の「年末ジャンボ宝くじ」も、100,000番~199,999番までの10万枚を1組としており、01組から200組までの200組・2,000万枚を1ユニットとしています。
2020年「年末ジャンボ宝くじ」(第862回 全国自治宝くじ)の当せん金・本数・確率
等級等 | 当せん金 | 本数 | 確率 |
---|---|---|---|
1等 | 700,000,000円(7億円) | 22本 | 2,000万分の1 |
1等の前後賞 | 150,000,000円(1億5千万円) | 44本 | 1,000万分の1 |
1等の組違い賞 | 100,000円(10万円) | 4,378本 | 10万502分の1 |
2等 | 10,000,000円(1千万円) | 88本 | 500万分の1 |
3等 | 1,000,000円(100万円) | 880本 | 50万分の1 |
4等 | 50,000円(5万円) | 44,000本 | 1万分の1 |
5等 | 10,000円(1万円) | 1,320,000本 | 333分の1 |
6等 | 3,000円 | 4,400,000本 | 100分の1 |
7等 | 300円 | 44,000,000本 | 10分の1 |
(発売総額1,320億円・22ユニットの場合 ※1ユニット2,000万枚)
宝くじが無税なのは、宝くじが税金だから?
「宝くじに当選しても、半分は税金で持っていかれてしまう!」なんて、噂を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは大きな間違いです。
「当せん金付証票法」第13条で、宝くじには税金がかからないことが法律で定められています。
第13条 当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。
当せん金付証票法 より
つまり、宝くじで3億円が当選すれば3億円が手に入り、7億円が当選すれば7億円がまるまる手に入るのです。
一方で、競馬や競輪などで得た配当金は一時所得として扱われるため、所得税と住民税が課税されます。
宝くじが無税な理由は、運営母体が自治体であるため、宝くじを購入していることで購入金額の約55%を税金として納めているのです。
2020年2月現在、消費税が10%であることを考えると、多額の当選金を手に入れる可能性がある一方、紙切れに消費税の5.5倍にもあたる税金を払っていることになります。(宝くじの購入には消費税はかかりません。)

↑宝くじを買うこと自体が納税である
アメリカの調査結果では、年収1万3,000ドル(約156万円)以下の家庭では、年間645ドル(7.74万円)を宝くじに費やしているということが明らかになっています。
所得が低い人ほど、よく宝くじを購入し、多額の税金を払っているのです。こうしたことからも宝くじが愚者の税金と呼ばれることに繋がっているように感じます。
宝くじ破産
「悪銭身につかず」ということわざが日本にはあるように、宝くじで高額当選した人のほとんどが数年以内に破産しているといわれています。その割合は、8割とも、9割とも言われています。
この10年間で1等に当選した人のその後を調査すると、80%の人が、借金漬けの不幸な生活を送っているというのです。
当選金が周囲の人に知られて金を無心されたり、桁外れの遊興費や投資詐欺で金を失い、破産したり。
当選の3年後には、借金地獄の泥沼。
1等賞金の3倍近い借金を背負い身を滅ぼす。自殺した人もいる。
世の中には社長やスポーツ選手、芸能人や企業のオーナー、不動産などの不労所得で優雅に生活する人など、たくさんのお金持ちがいます。しかし、宝くじに当選して豊かな生活を送っているという人の話を聞いたことがありません。
その理由として以下のようなことが考えられます。
- お金を正しく使う力がないから
- お金を自分で稼ぐ力がないから
- お金を守る力がないから
- お金を増やす力がないから
- インカムゲインとキャピタルゲインの違いがわかっていない
これらのことは、自力でお金を稼いだり、事業を立ち上げたり、商売をしている人ならば、だんだんとその過程で身に付けることができる能力です。
いくら事前に宝くじに当たったら貯金をしようとかローンを完済しようとか、一度に大金を手にすると思ってもみなかったようなことにお金を使ってしまったりする人がほとんどだと言います。投資をしようとしても、今まで全く投資の勉強をしたことがない人が投資をして上手くいくほど投資は簡単なものではありません。自分の力で稼いでいる人は、稼ぐ過程でいろいろな人脈を手に入れ、自分の資産を守ってくれる優秀な税理士やファイナンシャルプランナーの知り合いがいたります。また、一度自分の力で稼いだことがあれば、少し上手くいかなくなってもまた自分の力で稼ぐことができます。
また決定的な違いは、自分で稼ぐことが出来ていれば、お金の流れ、つまりキャッシュフローを重要視し、継続的に収入が入ってくる仕組みかを気にしますが、宝くじで大金を手にした人は、ただ自分の所持金の金額の残額だけを気にします。

↑自分で稼ぐ力があれば、その過程でお金の知識や経験が手に入る
宝くじは愚者の税金についてのまとめ
重要なことは、宝くじの運に頼るようなことではなく、自分自身でお金を稼ぐ力、お金を増やす力などを身に付けていくことではないでしょうか。
日本人はお金を卑しく思っていると言っても、宝くじ売り場の行列やジャンボ宝くじの熱狂ぶりを見れば、そんなことはただの建前で、自分の心に素直になればお金は必要であり、もっとお金を欲しいと誰もが思うはずです。
世界で最も有名な自己啓発書作家で、「成功哲学の祖」とも言われるナポレオン・ヒルも富豪になることをためらう必要はないと言っています。
富豪になることをためらうことはない。富をうまく活用して、人々の役に立ち、そしてまた脳力を最大限に活かすことは素晴らしいことだ。これを「拝金主義」と混合してはならない。
ナポレオン・ヒル│思考は現実化する
「人生お金じゃない」と発言することがカッコ良いという無意味な意地や見栄を捨て、人生を豊かにする為の自分への投資、自分の成長が重要だと感じます。
愚者の税金に囚われることなく、自分の能力を高めることでお金を稼いでいける人が増えていくことを願っています。