80ヵ国以上の国で、340万人以上に仕事を紹介する人材派遣会社のマンパワーグループの調査によれば、2020年には全世界のワークフォース(労働力)の35%以上がミレニアル世代(2000年以降に成人もしくは社会人になる世代で、1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多い)になると言い、つまり世界の労働人口の3分の1はミレニアル世代になるそうで、世の中の中心が新たな世代に移りつつあります。
ミレニアル世代は、子供の時からインターネットやパソコンがあるのが当たり前の時代に育った『デジタルネイティブ』であり、今までの他の世代とは大きく異なった価値観や思考を持ち、会社に縛られることを嫌い、自由を求め、自分の好きなことを追求し、仲間ややりがいを追い求める世代だと言われ、世界に大きなインパクトを与えつつあります。
ミレニアル世代が、世の中の中心になるにつれ、世の中の生き方、働き方がより柔軟に自由で自分らしいものに変化していくことが確実であり、いち早く自分オリジナルなライフスタイル、ワークスタイルを手に入れることが、これからの時代を豊かに生き抜くためには必要に感じます。
↑ミレニアル世代がこれからの時代の新たな働き方、生き方を作っていく
ミレニアル世代をミレニアル世代とたらしめ、他の世代にはない価値観を持つ要因の一つは、生まれながらにしてコンピューターに囲まれて育った『デジタルネイティブ』世代であり、リアルではなくバーチャルでの生活を送りながら、成人してきたことが考えられます。
マルコム・グラッドウェル氏の世界的ベストセラー『天才! 成功する人々の法則』の中で、世の中に莫大な変化をもたらしたIT長者のApple創業者のスティーブ・ジョブズ、Microsoft創業者のビル・ゲイツ、Google会長エリック・シュミットの3人の共通点は、1955年生まれであるという秘密が語られていますが、ミレニアル世代は彼らが世に与えたインパクトを真正面から受けた世代であると言えます。
経営戦略コンサルタントの鈴木貴博さんの著書である『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』の中で、イノベーションのサイクルについて述べられていますが、1975年に創業したMicrosoft、1976年に創業したAppleなどが数々のイノベーションを巻き起こし、世の中を一変させてきた真っ只中にミレニアル世代は生まれ育ってきたことを考えると、世の中の変化に柔軟に対応していくことを幼い頃から経験している世代だとも言えるかもしれません。
イノベーションは最初の種がまかれてからそれが花開くまでに30~50年の時間がかかると言われている。その中で、破壊的イノベーションが始まってから産業が入れ替わるまでのイノベーション後期の期間は20年ほどだ。
↑デジタルネイティブであるミレニアル世代はスマホさえあれば何でも行うことが出来る (画像:Wachiwit / Shutterstock)
ミレニアル世代は、子供の時から携帯電話やパソコンに触れ、SNSという新たなコミュニケーションツールを創世記から使ってきた世代で、新たな人の繋がりを形成してきたといっても過言ではありません。
Per Researchの統計によると、ミレニアル世代の81%がFacebookのアカウントを持ち、友人数の中央値は約250人だそうで、他の世代とは比べ物にならないほどの人の繋がりを持っています。
様々な調査から明らかになっている6人の知り合いを介すると世界中の全ての人と間接的に繋がることが出来る「六次の隔たり」という説を知っている人も多いと思いますが、2016年にFacebookが発表した調査ではFacebook上では平均3.57人を介すれば世界中の総人口全ての人と繋がることが出来るそうで、ミレニアル世代にとっては国境は最早ないものになりつつあります。
2014年にアメリカで始まった『アイス・バケツ・チャレンジ』は、FacebookやSNSでミレニアル世代を中心に瞬く間に拡散され、世界中に広まり、ミレニアル世代の繋がりのインパクトを世に知らしました。
↑SNSが生まれたことでミレニアル世代にとって国境はもはや存在しない (画像:instagram)
デジタルに敏感なミレニアル世代ですが、ロボットやAIが我々の仕事を奪うかにもしっかりとアンテナを張っており、JTB総合研究所の調査ではミレニアル世代の40%が自動化が自分たちの仕事の脅威になると答えており、44%は自分たちのスキルは不要になると考え、51%が再度仕事のなんらかの訓練が必要になると回答しています。
ミレニアル世代にも馴染みが深いX JAPANのYOSHIKIさんは、Forbesのインタビューの中で、音楽家の敵としてAIを認識にしていますが、AIと人間の違いについて次のように語っていました。
起業家のイーロン・マスク氏などは「AIを恐れている」と公言していますよね。音楽というのは、基本的に音の並べ替えなので、すべて計算できるんです。だから、ヒット曲のパターンを全部AIに学習させれば、新しいヒット曲が簡単に作れてしまう。だから、僕はよく「絶対にAIにできないこととは何か」、と考えます。
それはきっと、「無謀なことができる」ことではないでしょうか。「普通はこっちに行かないだろう」という方に思いきり振ることができるところ。あるいは、人間のだらしなさみたいなところもそうですね。今後はそれが、逆に人間の強みになるのではないかと思うわけです。
↑ミレニアル世代はYOSHIKIさんのようにAIと仕事の未来のあり方をしっかり考えている (画像: Frazer Harrison via Getty Images)
YOSHIKIさん率いるX JAPANは、日本の音楽業界の既成概念をぶち壊し、ビジュアル系バンドという一つのジャンルを確立するだけでなく、LUNA SEAやGLAYといったその後の日本の音楽シーンの中心となるロックバンドを生んできました。
X JAPANやYOSHIKIさんの影響がどの程度なのかは定かではありませんが、日本の音楽シーンの常識をぶち破り、Xというバンドが世界で戦えるようにX JAPANと改名したように、ミレニアル世代は今までの世代の常識をぶち壊し、世界を変えていくような発想を持ち合わせていると言えます。
↑ミレニアル世代は、親世代が作って来た時代遅れの価値観と決別しようとしている
実際に、JTB総合研究所の調査によると、ミレニアル世代は他の世代に比べて2倍以上の人が「いつか世界を変えたい」と考えているそうで、そのためにミレニアル世代の59.2%が毎月1回以上読書をしており、語学学習などの自己啓発をする人も他の世代に比べて多いという結果が出ています。
前述のマンパワーグループの調査によれば、ミレニアル世代の93%が「継続的なスキル開発を未来のキャリアにおける重要な要素だとみなして」いるそうで、自身のスキル開発にはお金も時間も厭わない世代であり、自己研鑽に興味が無いミレニアル世代はたった7%しかいないそうです。
↑ミレニアル世代は会社の飲み会が全く意味のないものだということに気がついており、社外のコミュニティで自己研鑽を行うことは当たり前
世界の極僅かな天才たちが様々な技術で世界を一変させようとし、その一つにブロックチェーンが上げられますが、ブロックチェーンのような技術が出てきた背景には企業や政府への不信感があるようです。
PR会社のエデルマンが毎年発表している「トラストバロメーター」によると、2015年の企業・政府機関に対する信頼度は、2008年の世界同時不況の頃と同じレベルにまで低下した。テクノロジー業界は信頼度の高い業界として知られていたが、多くの国で今回初めて信頼度が下がる結果になった。なかでもCEOや官僚に対する信頼度は最低で、学者や専門家に大きく引き離されている。
ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット|ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか
かつては企業や国が豊かさを保証していましたが、ミレニアル世代の多くが景気の良い時代を知らず、大企業神話、終身雇用や年金制度、医療保険制度などが音を立てて崩壊していくのを目の当たりにしながら育ってきた事を考えると、信じられるものは自分や仲間しかいないと思うのは当然のことなのかもしれません。
↑時代を変えるテクノロジーの多くは、政府や会社への不信感から生まれて来た
ホリエモンこと堀江貴文さんが、近畿大学の卒業式で行ったスピーチが話題を呼びましたが、一度は投獄された堀江貴文さんの言葉が世間に絶大なインパクトを与えていると思うと、今まで時代では非常識だった生き方が、これからの時代の常識なのかも知れないと考えさせられます。
これまでは、卒業したあと就職活動とか、まあたぶんしたんでしょうけど、同じ会社でずっと勤めあげて、定年退職して、その間に家族を持って、家を建ててみたいな、まあいわゆる普通の生活というのを、このあと皆さんは送っていくことになったのかもしれませんが、そんな未来は、おそらく皆さんのうちの本当にごく一部の人しかそういった未来を歩まない、いや歩めないと思います。
堀江貴文
↑親が「良い大学に入って、良い会社に入れ」と言っても、そんな人生がもはや実現できないことをミレニアル世代は気がついている
日本の10年先を行くと言われるアメリカでは、ミレニアル世代の働き方の変化が顕著に始まっており、大学を卒業後、就職先があるにも関わらず、あえてパートタイムで働く若者が600万人を超え、今もなお増加傾向にあることを米国労働統計局が発表しました。その主な理由は、「両親のように1つの会社に人生を預け、不況になったらリストラされる人生はバカげている」、「両親のように好きでもない仕事をしたくない」、「自分のビジネスを築きたい」、「自分の好きな仕事がしたい」、「もっと時間を自由に使いたい」などで、自分の人生は自分でコントロールし、自分の責任でお金を稼ぎ、自由な人生を送りたいというミレニアル世代の特徴が顕著に現れています。
日本においても、ランサーズが発表した調査によれば、日本のフリーランスの数は、2017年は前年対比で5%増加し、1122万人となり、アメリカ以上に早いスピードでフリーランスの数が増加していますが、これは日本の労働人口の約17%にあたり、約5人に1人は会社に雇われないという選択をしていることがわかります。
驚くべきは、独立してフリーランスとして働く人の労働時間は一週間あたり平均33.6時間であり、長時間労働が社会問題になり政府までも労働時間を短くしようと『働き方改革』『高度プロフェッショナル制度』などの様々な施策を打っている中、フリーランスの人は時間に縛られない働き方を手に入れていることがわかります。フリーランスの人の中で、企業に雇われたいと考えている人は、たったの4%しかいないそうですし、フリーランスの人の仕事の満足度は56%と企業に雇用されている人の36%を大きく上回っています。
↑フリーランスが増えている背景は、ミレニアル世代が会社を抜け出しフリーランスとして生計を立て始めていることが寄与している
AIの技術革新が目まぐるしく、これから多くの仕事がAIに取って代われらていくことが確実ですが、めんどくさいこと仕事はAIがやってくれる時代が目の前に来ているようです。
キングコング西野亮廣さん、作家でブロガーのはあちゅうさん、浅草キッドの水道橋博士さんなど、かつてはテレビなどのメディアの活躍が目立った人が好きなことをして楽しんで暮らすという新たな働き方・生き方を手に入れ、憧れを抱くミレニアル世代が多いのは事実ですし、ヒカキンさんやはじめ社長さんに代表されるYouTuberというたった10年前には存在し得なかった仕事が市民権を得る時代になりました。
↑YouTuberはもはや立派な職業として市民権を得ている (画像:HikakinTV|YouTube)
ある調査によれば、先進国の人の寿命は1日あたり5時間ずつ伸びているそうで、リンダ・グラットン氏の著書であり世界を震撼させた『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』で証明されたように、今の20代は100歳以上まで生きることが当たり前の時代に突入しています。
100年という月日は、給料をもらうために、好きでもないつまらない仕事をするにはあまりにも長すぎる人生であり、避けることが出来ない長寿化も新たな働き方を考えるきっかけの一つになっています。
世界中の人々の生活を根底から覆した企業であると言っても過言ではないGoogleの投資部門であるGoogle Venturesが、不老長寿ビジネスに対して巨額の投資をしていることは有名ですが、技術進歩によって人間は500歳まで生きることができると公言しています。
GoogleのCEOであるラリー・ペイジ氏は、AIやロボットが確実に人々の仕事を奪っていくとインタビューの中で断言しています。
人工知能の急激な発達によって、今現在日常的に行われている仕事のほとんどをロボットが行うようになり、近い将来、10人中9人は今とは違う仕事をしているだろう。
(中略)
コンピューターが数多くの仕事をするようになる。これは私たちが 『仕事をする』 という考えを大きく変えることになるだろう。あなたはこんな現実は嫌だと思うかもしれないけど、これは必ず起こることなんだ。
ラリー・ペイジ
↑こんな現実は嫌だと思っても、ロボットがあなたの仕事を奪うのは確実なこと (画像: Justin Sullivan via Getty Images)
AIが人々の仕事を奪っても、なくなった分だけ新たな仕事が生まれると楽観視している人がいますが、そう言った人は新たな仕事が生まれるまでの間に20〜30年のタイムラグがあることを見逃していると鈴木貴博さんは『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』の中で指摘しています。
私たちが生きている間に500歳まで生きることができる技術をGoogleが開発できるかはわかりませんが、仮に100歳まで生きるとしても、新たな仕事が生まれるまで30年間も働かずに待ち続けることは不可能ですし、その前に自分の理想の仕事を探す方が何倍も生産的であることは誰が考えても明らかです。
二足のわらじどころか、百足のわらじを履いていると言う堀江貴文さんは、『99%の会社はいらない』の中で次のように述べています。
ロボットが社会全体の富を自動的に作り出し、個人に利益をもたらしてくれる。そして、僕たちは働かなくても食べていけるようになる。単純作業のような仕事はなくなっていき、人間にしかできない仕事の比率が高まっていく。だから、人間は空いた時間で好きなことができるようになる。それが僕の考えだ。
(中略)
だから、夢や好きなことを追いかけて欲しい。面白いことを追いかけて欲しい。どんなことだっていい。金持ちになりたい、ゲームをずっとやっていたい、モテたい、アイドルになってチヤホヤされたい。そんな一見すると、浅はかなようなことだっていい。身の丈や身のほどなんて関係ない。
堀江貴文|99%の会社はいらない
↑誰もが自分の好きなことで自分自身をブランディングして行く時代が来ている
人類歴史を振り返れば、会社に雇われて働くことが当たり前の時代というのは、大量生産時代から始まったごく僅かな期間であり、かつては誰もが自営業や、好きなことや得意なことを生業としていたことは歴史の教科書を開かずともわかるはずです。
これからの時代の主人公となっていくミレニアル世代の価値観は、人間が本来あるべき姿、あり方を再起させるものなのかもしれませんし、目を見張るようなテクノロジーの進歩や歯止めの効かない長寿化は、自分らしく働き、自分らしく生きていく後押しをしてくれるのかも知れません。
会社に入れば、会社に雇われている人に囲まれて、毎日を過ごすため、会社に雇われるという生活が当たり前のように感じてしまいますが、少し外を見てみるとミレニアル世代という新たな世代が、新たな世界の常識を作りつつあるように思います。
↑多くのミレニアル世代が自分らしい人生を手に入れることが出来る条件が揃いつつある
2015年に発売されたX JAPANのシングル『Born to be free』は、自身の楽曲についてほとんど語ることをしないYOSHIKIさんが「誰もが自由という名の下に生まれ、無限大の夢に向かって生きることができると思っています。」とコメントをし、X JAPANの新たな定番曲になっていますが、その中で次のように歌われています。
Born to be free (free forever)
Born to be free (now and forever)
Nobody can steal (steal the freedom)
Our life away (they will not sever)
Born to be free|X JAPAN
人間は本来誰からも奪われることのない自由を得るために生まれてきたのであり、ようやく人間のあるべき働き方、生き方を実現できる時代がやってきたということを、ミレニアル世代が証明していくような気がします。
参考文献|天才! 成功する人々の法則|仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること|2022―これから10年、活躍できる人の条件|「好きなことだけやって生きていく」という提案|99%の会社はいらない|好きなことだけで生きていく。|多動力|ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉|LIFE SHIFT(ライフ・シフト)|フリーエージェント社会の到来 新装版—組織に雇われない新しい働き方|ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか|革命のファンファーレ 現代のお金と広告|7つの制約にしばられない生き方|モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには|胸懐|YOSHIKI/佳樹