【書評】老後破産―長寿という悪夢―|NHKスペシャル取材班著

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高齢化社会を超えた、超高齢社会を迎えた今の日本で「老後破産」と呼ばれる現象が全国に広がっています。

その対象になっているのは、何も多くの借金を抱えたような人ばかりではありません。一生懸命に約40年社会で働きつづけ、家もあり、年金も納め続け、預貯金もある、ごくごく普通の家庭に襲いかかっている悲劇が、「老後破産」なのです。

年金でのんびり暮らしていた高齢者が病気やケガなど、普通に生活していれば誰の身にも起こりうる日常のささいな出来事がきっかけとなり、自分だけでは暮らしていけずに破綻してしまうケースが全国各地で相次いでいるのです。

「お金がなくて、病院に行くことをガマンしている」

「年金暮らしなので、食事は1日1回。1食100円で切り詰めている」

まぎれもなく現代の日本で、ごく普通の人生を送ってきた高齢者たちが直面する現実だ。

なぜ、こうした事態がひろがっているのか——その背景には、世帯あたりの収入が過去20年近く減り続けている状況がある。働く世代の年収も下がり続けているが、高齢者ひとり当たりの年金収入も減り続けている。さらに、拍車をかけているのが「単身化」、ひとり暮らしの高齢者が600万人を超える勢いで急増していることだ。

引用元:老後破産: ―長寿という悪夢―

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老後破産: ―長寿という悪夢―|NHKスペシャル取材班

老後破産-長寿という悪夢|NHKスペシャル取材班

NHKスペシャルで大反響を呼んだテーマを元にした書籍が発売され、話題を読んでいます。老後破産と聞いて、誰もが避けたいと思うものですが、NHKでこのような特集が組まれるということは、日本全体の深刻な問題の一つとして定着しつつあることを示しています。

誰もがなりうる老後破産について、非常にわかりやすく特集された1冊です。20代のうちから、読むべき1冊だと感じます。

NHKスペシャルで放映され、大反響を呼び、書籍化されたものになります。

ひとり暮らしの高齢者が600万人に迫り、年収が生活保護水準を下回る人はそのおよそ半数の約300万人だといわれています。生活保護水準は、地域によっても多少異なりますが、年収が約120万円以下の場合、生活保護水準だと見なされます。この300万人の生活保護水準を下回る人のうち、生活保護を受けている人はたった70万人。残る人たちの中には預貯金など十分な備えがある人もいるが、それを除くと、ざっと200万人余のひとり暮らしの高齢者は生活保護を受けずに年金だけでギリギリの生活をつづけているが、病気になったり介護が必要になったりすると、とたんに生活は破綻してしまうというのが今の日本の高齢者の現実なのです。

200万人と言えば、日本の全人口の約60分の1に相当し、これだけ豊かになり欲しいものは大抵すぐに手に入る世の中であっても、日本人の60人に1人は毎月の生活費が10万円を下回り、電機やガスが使えないという人や治療費がないために病院にすらいけないという生活をしているのです。日本全国で65歳以上の高齢者の人口は約3200万人であるため、約16人に1人が老後破産の状態であり、独居高齢者に限定するとその数はなんと3人に1人が老後破産なのです。

本書中では、実際に東京などで暮らす高齢者に取材をし、その生活を赤裸々に納めていますが、登場する人たちに共通するのは皆しっかりと社会人として真面目に働き豊かな老後がくるはずだと信じていたことです。誰もがこんな苦しい老後がくることは予想すらしていなかった中で、ある日突然老後破産が自分の身に襲い掛かってきたのです。老後破産は特別な人に起こるものではなく、日本人ならだれでもその可能性があり、中でもいい大学を出て良い会社に入って真面目に働けば老後は安心と旧来の考え方をする真面目な人材ほど老後破産の危険性が高いといいます。

「こんな老後を予想できなかった」

「まさか自分が『老後破産』するなんて」

老後破産をしている人たちは、皆自分の身にまさか老後破産が来るなんて思いもしなかったと口にするそうです。

 

日本が高度経済成長を続けていた時代、真面目に働けば報われる社会だった。だからこそ真面目に働いていれば、安心した老後の暮らしを手に入れられると信じていたであろう。今の高齢者たちは、当時、皆がそう信じて来たのだと思う。

しかし、超高齢社会が到来し、核家族化が進み、日本社会は激変期に突入した。独居高齢者が数百万人単位で急増し続け、家族が支えとなることを前提とした社会保障制度は機能不全を引き起こしている。そうした中で、「老後破産」ともいえる現実が広がっているのだ。

「こんな生活になるなんて思いもよらなかった」

(中略) 多くがそう語る。何も困らないと思ってきた老後を迎えてみると食べていくことさえも出来ないという現実--思い描いていた老後とは、あまりにもかけ離れている。

引用元:老後破産: ―長寿という悪夢― P.60

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