【書評】『仕事2.0』人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)|佐藤留美

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2016年10月にリンダ・グラットンさんとアンドリュー・スコットさんの共著である『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』が発売され、誰もが人生が100年になることを覚悟したのと同時に、思ったよりも長い人生に不安を感じずにはいられなくなったと思います。

『人生100年時代』という言葉は、2017年ユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされ、首相官邸には『人生100年時代構想会議』が設置され、個人だけではなく、日本全体が人生が100年を越すことの危機を感じてきます。

人生が100年になることで、私たちは働き方、仕事、そして、人生そのものをアップデートしなければならなくなりました。

NewsPicks編集部副編集長の佐藤留美さんの著書は、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』をより日本人に特化した形でより具体的に書かれているため、100年の人生を生き抜くための必読書と言えそうです。

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仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)|佐藤留美

仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)|佐藤留美

一つの会社で一生を終えることはもはや不可能。

究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは――。

過去を捨て、変身し続ける勇気を持て。

佐藤留美|仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

本書は、日本人全てのこれからの時代のバイブルになるといっても過言ではない一冊に思います。

 

急速に若手ビジネスパーソンの情報源の一つとして必要不可欠になり、常に質の高い情報を発信し続ける『NewsPicks』。

その編集部副編集長という立場から、常に日本のビジネスシーンの中心の情報を自らの目で見て、発信してきた立場の佐藤留美さんの著書ということもあり、非常に説得力があり、学びの多い一冊です。

 

全世界で大反響を呼んだ『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』ですが、中には本が分厚くて断念してしまったという方もいるかもしれませんが、そんな方もせめて本書だけは読むべきだと感じます。

 

『昭和の人生すごろく』の終焉

良い大学に入り、良い会社に入り、終身雇用、年功序列という守られた空間の中で、一生懸命に働き、結婚し、35年の住宅ローンを返しながら、定年退職し、老後は年金で優雅に暮らす。

そんな生き方が昭和の時代の日本人の理想の生き方であり、誰もが疑うことのない共通認識でした。

しかし、高度経済成長が終わり、会社で頑張ればみんな同じように豊かになるという一億総中流時代が幕を閉じてからは、こうした生き方は実現不可能になりました。

しかしながら、実現することの出来ない夢を、平成の終わりが目前に迫った今も尚多くの若者が追い求めている事実があります。

2017年に経済産業省の若手官僚が『不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~』というレポートを発表し、後に書籍化されましたが、その中でこうしたかつての日本人の理想の人生を『昭和の人生すごろく』と例えています。


(画像: 経済産業省 産業構造審議会総会(第20回)‐配布資料 不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~より)

 

本書は、『昭和の人生すごろく』を未だに信じる人たちへの最後通告であり、新たな時代を輝かしい人生に変える架け橋ということが出来ます。

新卒で入った会社に定年まで勤める。仕事内容は自分で選ばず会社任せ。自分のキャリアは会社が決めるから、考える必要はない。仕事は何よりチームワークが基本だ。もちろん、副業など会社の「和」を乱す行為はしない。上司より先には帰らない。「勉強」や教育を受ける期間は大学生までで社会人は仕事一筋。主たる稼ぎ手は夫で、子どもは基本、妻が育てる……。

このような生き方、働き方を望む人が多いということに異論はありませんし、現状を変えたくない、変わりたくないという人の権利は本来尊重されるべきです。

ただし本書では、今後の日本において、上記のような生き方・働き方が見直しを迫られているという現実だけは、明らかにしておきたいのです。

佐藤留美|仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

 

日本人の正社員は”三無”

職務、勤務地、労働時間が選べない──。この3つのことから、日本の正社員(総合職)はよく〝三無〟と呼ばれます。

佐藤留美|仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

本書の中で、著者の佐藤留美さんは、日本の正社員の問題点の一つに、職務、勤務地、労働時間が選べないことを指摘しています。

海外の企業では、新卒一括採用は行わず、足りないポストに対して、人員を社内外から募集をかけるため、自分の希望の職務に就くことが当たり前ですが、日本では顔も見たことがない人事部が書類だけを見て職務を決めているという異様な事態が何十年も続いています。

メガバンクや総合商社のような、全国、全世界に拠点がある会社では、持ち家を買った瞬間に、その人は会社に人生を捧げたと判断され、地方や海外への転勤を嫌がらせのように行うという都市伝説のような悪行がいまだに根強く残っていることも否定できません。

労働時間に関しては、海外では残業代という概念はなく、与えられた職務をこなしていれば、定時に帰宅しても何も文句は言われないため、給料が同じなら生産性とパフォーマンスを高め早く帰ろうというインセンティブが働きますが、日本企業ではいまだに上司が会社に残っていたら、若手の社員は帰れないという暗黙の了解があり、日本人の生産性を大幅に低下させています。

日本人は、長らく会社に人生を捧げ、会社では鉄仮面を被り、どんな嫌なことがあっても、守るべき家族のために全てを犠牲にして、身を粉にして働くということが美徳とされましたが、こうした悪い風習が日本を世界の常識から置き去りにしてしまったのかもしれません。

 

「一億総活躍」「人生100年時代」の本当の意味

『人生100年時代』と並んで『働き方改革』という言葉も、2017年の流行語大賞にノミネートされましたが、言葉だけを見ると人生100年時代をより良く生きるために国が応援してくれるような印象を持ちますが、実際にはもう少し暗い残酷なメッセージを国がオブラートに包んで発信しているだけに過ぎません。

会社が社員の人生を守る時代が終わり、個人同士の弱肉強食の時代が幕明けたことに他なりません。

人生100年なら、定年が65歳まで延長されたところで、余生はあと35年、その間、年金支給と医療費がもつ保証はもうどこにもありません。だから、「健康を管理して健康寿命までは働いてください。そして70歳、80歳まで働くには、30代、40代の早いうちから長く働く戦略を自分で考えてください」──。これこそが「人生100年時代」「働き方改革」「一億総活躍」といったキーワードに込められた真のメッセージなのでしょう。

佐藤留美|仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

なぜ、あなたの話は響かないのか』などの著書で知られるスピーチライター蔭山洋介さんは、政府や官僚のスピーチ原稿を書くために、国の政策会議などの参加する中で、『副業解禁』は、「一部のエリート層が大企業の社則に嫌気がさし、離職することを食い止めるために行う政策である」というのが、国の真意だと感じたと語っていました。

どこに行っても稼げる一部のエリートたちが、週5日8時間の労働をするよりも自分で自由に働きたいと離職されては、国全体の機会損失になってしまうため、副業を解禁することで、週2時間でも3時間でも良いから企業に残って欲しいというほど、国は危機感を感じていると言います。

一部のエリート層が会社に嫌気がさして離職してしまっては、さらに日本の名だたる大企業が倒産に追い込まれる可能性を国は示唆しているのでしょう。これが、『副業解禁』という一見明るいニュースの裏に隠された一つの国からのメッセージなのです。

 

社外のコミュニティ参加し、変身資産を手に入れろ

人生が100年になると、お金の問題が頭に浮かんで、貯金をしたり、副業をして収入を増やしたり、株式投資などを始めた方がいいのかと考えたりしてしまいますが、リンダ・グラットンさんは金融資産や不動産などの有形資産ではなく、形のない無形資産が重要であると言っています。

1.生産性資産: 生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。構成要素はスキルや知識など。

2.活力資産: 肉体的・精神的な健康と幸福のこと。健康、友人関係、パートナーや家族との良好な関係などが該当。

3.変身資産:人生100年時代を生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験する。それに対応するために自分をよく知っている、助けてくれる人的ネットワークがある、また、新しい経験に挑戦する意欲があるといった要素。

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット|LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

中でも、リンダ・グラットンさんは、『変身資産』を増やすことが最も重要であるといいます。かつての日本のように一度会社に入社したら、同じ会社で力を合わせて定年まで頑張ると言ったことは通用しなくなり、自分のライフステージに応じて、自らで新たな道を選ばなければならないため、自分自身が変化し続けなければいけないからです。

 

佐藤留美さんは、『変身資産』を得るために必要なものの一つに『コミュニティ・デザイン力』をあげています。今までは『キャリア・デザイン力』が大事な時代でしたが、人生100年時代は転職を何回もすることが容易に想像できますし、その途中で今までに経験したことがないような分野の仕事に挑戦するときも出てくるはずです。

そのためには、早い段階から、会社の社内だけの人脈でなく、社外のコミュニティである勉強会などに参加することが重要だといいます。そこで知り合う新たな人、今の自分とは全く違う業界の人たちから、刺激を受けたり、学んだり、時には人生を一変させるような仕事の誘いが来たりする可能性もあります。

ある調査によれば、家族や親友などの親しい人から紹介された仕事と、社外のコミュニティなどで知り合った人の弱いつながり(ウィークタイズ)の人から紹介された仕事では、弱いつながりの人から紹介を受けた仕事に就いた方が満足度が圧倒的に高かったといいます。

 

読書はノーリスク・ハイリターン

「本を読む」ことはリスクも少なく、極めて効率的な学びの1つです。

佐藤留美|仕事2.0 人生100年時代の変身力 (NewsPicks Book)

実際に、転職や副業をしてみて、経験からの学びはとても重要ですが、いきなり行動を起こすことには誰もが勇気が必要ですし、リスクが伴います。金融投資の世界にノーリスク・ハイリターンの商品など存在しませんが、自己投資では読書が最も効率的でリターンの高い投資になります。

読書は、様々な結果を収めた人たちが、その人の何十年にも及ぶ学びや知識をたった数千円の本に凝縮してくれているのです。自分で経験しようと思ったら、その著者と同じように何十年もかかってしまいますが、読書であれば数時間で最も重要なエッセンスを学ぶことができるのです。

また佐藤留美さんは、『社外のコミュニティで多種多様な人と接すること』、『誰かに教えること』もとても重要な学びになると言います。

 

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まとめ

一冊を通して紹介したいことばかりで、続きや詳細は是非本書を手にとって、ご自身で確認いただきたいと思います。

ニュースでは、国の様々な政策の今までとの変更点や、良いところばかりが報道されますが、今の日本の状況を見れば、国全体が危機に陥っているから徐々に国民の負担を増やそうとしていることは明らかです。しかし、ニュースの報道だけではわからない真意まで、バッサリ赤裸々に解説してくれていて、とても気持ちがいい本です。

また、これからの時代に必要な能力や学習方法などもわかりやすく解説されているので、日本人全ての方に読んでもらいたい一冊です。

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最後に

本書の中で、佐藤留美さんは、『読書の重要性』『社外の人脈の重要性』『他の人に教える重要性』を述べていましたが、この3つが揃ったものが『読書会』であると感じ、改めて東京アキバ読書会を主催していて、たくさんの人の役に立てているのかなと実感いたしました。

東京アキバ読書会には、20代の社会人の方を中心に多種多様な職種の方に参加いただいており、今までに数千名の方にご参加いただいています。普段の仕事では出会うことがないような仕事をされている方が毎回参加されており、主催者の私も毎回刺激を受けています。

また東京アキバ読書会は、参加者の方に本を一冊お持ちいただき、紹介するタイプの読書会のため、他の人に本の内容を教えるということを実践することができます。最初は誰かに教えるということを難しいと感じるかもしれませんが、何回も参加するうちに段々と上達していきますし、読書会であればその場でフィードバックをもらうことができます。

佐藤留美さんも、一方的に話しを聞くだけのセミナー形式の勉強会はオススメしないと本書の中で語っていましたが、本書を読みながらどんな勉強会が全ての要件を満たしているかを考えていたら、数年間主催してきた読書会が既に佐藤留美さんが述べている条件を全て満たしていることに気がつき、少し驚きもありました。しかし、同時に読書会を主催してきたことを誇りに思えたのも事実です。

社会人になってからの学習が先進国の中で最も少ない日本人が、今から学習する手段の1つが読書会になると感じます。

 

東京アキバ読書会は、東京の秋葉原で毎週20代の社会人中心の読書会を開催しておりますので、少しでも興味がおありの方は、下記よりお申込みください。

読書会に初めて参加するという方もたくさん参加されておりますので、読書会に初参加の方も安心してご参加いただけましたら、幸いです。

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