誰もがこの世界に資本家と言う存在がいると言うことを想像したことがあると思います。
資本家は、多額のお金を持ち、得体の知れない生活をする、自分とは全く関係ない世界の人たちだと感じることが多いのではないでしょうか。
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』で有名な三戸政和さんは、「資本家」とは、「好きなことを、好きな人と、好きなようにやる人」のことだと言います。
先行きの見えない不安の世の中で、これからの自分の人生に迷いがある人も多いと思います。
サラリーマンに不安を感じる人の新たな生き方が、資本家なのです。
資本家マインドセット (NewsPicks Book)|三戸政和
本書では、元々はサラリーマンをしていた三戸政和さんが、資本家という新たな生き方を提示してくれています。
誰もがこれからの働き方や、老後の生き方に不安を感じる先の見えない世の中で、一つの希望を与えてくれます。
資本家は自分には関係ないと思っている方にこそ、お手にとっていただきたい一冊です。
本書は、次のような方にオススメです。
副業や投資など別の収入源が欲しいと思っている方
将来は起業をしたり、独立をしたいと思っている方
経営者に憧れる方
好きなことを好きな人と好きなようにやりたい方
自分は資本家とは関係ないと思っている方
資本家マインドセットの目次
第2章 サラリーマンでは金持ちになれない
第3章 サラリーマンは絶滅する
第4章 資本家への道――私の場合
第5章 会社を買って「資本家」になる
第6章 資本家の仕事3原則
第7章 資本家マインドセット10カ条
資本家とは何か?
本書のタイトルを見たときに、最初に疑問に思うのが資本家とは何かということだと思います。
資産家や投資家、起業家などとは違うのかと感じると思います。
三戸政和さんは本書の中で、次のように定義しています。
資本家とは、お金からも働くことからも自由な存在だ。
サラリーマンと同じ労力で、数十倍どころか数百倍の結果を手にするのが資本家。
理由は簡単。
資本主義のこの世界では、ゲームは資本家に最も有利に働くルールになっているからだ。
資本家は、「好きなことを、好きな人と、好きなようにやる人」のことだと言います。
こうした人生を実現するためには、「他人の時間」を生きるのではなく、「自分の時間」を生きる必要があります。
資本家は、一見するとお金持ちのイメージがあるかもしれませんが、三戸政和さんによれば、資本家になりキャッシュリッチではなく、タイムリッチを目指していくことで幸せな人生を掴むことができると言います。
孫正義さんの時給は?
(画像: Bloomberg via Getty Images)
ソフトバンクの創業者である、孫正義さんのことは誰でもご存知だと思います。
では、孫正義さんの時給はいくらだと思いますのでしょうか。
こうした質問をすると、「100万円くらい?」と答える人もいれば、「500万円はあるだろう」と答える人もいると思います。
日本を代表する経営者の1人であり、毎年長者番付で見かけているような気がするのではないでしょうか。
孫正義さんは、ソフトバンクの経営者であるため、毎年役員報酬として収入が公表されています。
(画像:日経新聞|ソフトバンクG、役員報酬総額1割減)
2020年3月期の孫正義さんの給料は、2億900万円と公表がされています。
労働基準法で定められている年間の法定労働時間は1週間に40時間、1日8時間と定められています。
1年が52週と計算すると、2080時間になります。
孫正義さんの時給を、仮に年間総労働時間2080時間で計算すると、時給約10万480円になります。
孫正義さんでしたら、1日8時間労働ということはないと思いますので、仮に12時間働いたと仮定して、3000時間で計算してみます。
そうすると、時給約6万9,666円になります。
いかがでしょうか。
思ったより、時給が少ないと感じるのではないでしょうか。
藤原和博さんが、時給100倍の謎という話をよくしています。
日本人は時給800円のファーストフード店のアルバイトの人から、マッキンゼーのシニアコンサルタントでは時給8万円を超えるということを話されています。
時給8万円はもちろん高いですが、外資系投資銀行やコンサルティングファームで働いている人なら、時給8万円という人たちは、ゴロゴロと存在しているのです。
つまり、孫正義さんは、日本のトップの経営者の1人にも関わらず、時給で言えば他のエリートサラリーマン以下と言うことになるのです。
しかし、孫正義さんの年収が100億円、200億円とあることを聞いたことがある方も多いと思います。
(画像:東洋経済オンライン|配当含む「年収1億円超」経営者ランキング500)
孫正義さんは、ソフトバンク下部からの配当収入で2019年に関しては、193億円もの収入を得ているのです。
株主の権利として受け取っている配当金は、もちろん時給換算できず、労働時間という概念も当てはまりません。
労働対価として約2億円を受け取り、株主対価として193億円を受け取っているのです。
「資本家」は「投資家」とも「経営者」とも違う
三戸政和さんは、資本家という存在は投資家とも経営者とも違うと言います。
株式投資をして、配当や売買益を得る存在は資本家ではなく、投資家だと言います。
三戸政和さんがいう資本家とは、自分の手腕で会社の事業を成長させ、そこから利益をえる存在だといます。
孫正義さんは、ソフトバンクの大株主であり、配当を得ていますが、労働をすることによってソフトバンクをさらに成長させ、収入を増やしているのです。
また、会社の社長の立場である経営者とも異なると言います。
株式会社では、制度上、資本と経営は切り離されており、資本家は現場を経営者に任せているのです。
資本家とは「お金を生む仕組み」と作ること
資本家の仕事とは、「お金を生む仕組み」を作ることだと言います。
資本家になるためには、資産が必要と考える人も多いと思いますが、それも間違いだと言います。
資産家になりたいのであれば、資産をたくさん作る必要がありますが、資本家はお金を生む仕組みを作ることであり、資産を作ることではないのです。
その証拠に、著者の三戸政和さんが当初自分が出した資金は、たったの2万4900円だと言います。
時間は、誰にとっても有限であり、平等に1日24時間、1年365日です。
同じ1年で、年収が300万円の人もいれば、3億円の人もいます。
金額の差は100倍ですが、100倍の時間を働いている訳ではありません。
むしろ、場合によっては、年収300万円の人の方が長く働いている場合もあります。
では、何が違うのでしょうか。
自分の24時間を使って働いているのか、他人の24時間を使って働いているのかの違いがあるのです。
サラリーマンの働き方は、基本的に「人(自分)が働く」だ。有限の時間を切り売りしているから、稼ぎが爆発的に増えることはない。
これに対して資本家は、同じ時間の中でお金を何倍にも増やす。サラリーマンの稼ぎが「足し算」だとすれば、資本あは、時間効率を高めて限られたリソースを何倍にも膨らませて、「かけ算」で稼ぐ。
お金を生む「仕組み」とは言っても、もちろん、その内実は人。人が動かなければ富を生むことはできない。だから資本家は、自分ではなく他人に働いてもらう。
このことについては、USJを再建させた立役者である森岡毅さんも著書『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』の中で全く同じことを言っています。
こうした、資本家の仕組み、社会構造を知らないまま生きていくことは非常に危険だと感じます。
資本家になるためには、ホリエモンのビジネスの4原則を実践
本書の中で、資本家になるための大原則として、堀江貴文さんが提唱している4原則が挙げられています。
それは、
儲かる仕事の大原則は、①元手がゼロ、②定期収入がある、③在庫リスクがない、④利益率がいい、の4つだ。
堀江貴文|君がオヤジになる前に
のことです。
三戸政和さんが行っている、投資ファンドもこの4つをしっかりとクリアしています。
資本家を目指す際には、誰もがこの条件をクリアした方法をとっていく必要があります。
資本家マインドセット10ヵ条
本書の最後の章では、タイトルにもある資本家マインドセットとして、10ヵ条が紹介されています。
好きなことを、好きな人と、好きなようにやるのが資本家であると、三戸政和さんは言っていますが、そのことを忘れないようにするためにも、このマインドセットを常に頭にイメージし続けることが大切に感じます。
資本家と聞くと、「どうやればなれるのか?」という方法や手段ばかりに目が行く人が多いですが、大切なことは考え方であり、このマインドセットだと感じます。
この資本家マインドセットがしっかりと考え方に染み付き、資本家になりたいという思いが強まっていけば、必然的に資本家になる手段は明確になる気がいます。
逆に手段があったとしても、考え方・マインドセットが身についていなければ、資本家にはなれるはずもありません。
[1]「自分の時間」だけで生きる
[2]始動前のアイドリングをなくす
[3]スケジュールを「他人の時間」で埋めない
[4]そのスーツとネクタイは本当に必要か?
[5]その名刺は本当に必要か?
[6]いつまで「定時出社」を続けるのか?
[7]インパクトの大きいお金の使い方をする
[8]好きなこと・やりたいことを仕事にする
[9]「遊び偏差値リスト」をつくる
[10]声は大きく!
まとめ
本書の中では、資本家になる方法として提示されているのは、中小企業をM&Aするという方法のみです。
元々、三戸政和さんは『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』などの著書でブレイクされた方のため、方法論が会社を買うということになるのは納得がいきます。
しかし、本書を読んで一つ感じることは、今の社会の中で資本家になる方法は会社を買うことだけではないということです。
様々なビジネスプラットフォームが世の中に現れてきて、会社を買うと同等の価値のある「お金を生む仕組み」を作るという手段がたくさん生まれてきたように感じます。
会社を買うという選択肢をすぐに決断せずとも、しっかりと世の中を見渡すことができれば、違う方法で同じ結果を出すことが出来ると感じます。
重要なことは、タイトルにもあるように資本家としてのマインドセットであるため、手段のことを考えずに読めば、非常に良著だと感じます。
いくら、資本家になるための手段が手に入ったとして、資本家としてマインドセットを持たず、サラリーマン的な感覚で目指していても、失敗に終わるだけです。
まずは、本書を読み、資本家としてのマインドセットを手に入れることがスタートのように感じます。
本書の中でも指摘されていますが、今後、サラリーマンという働き方には限界がやってくることは誰の目にも明らかです。
そうした時代に、まずはマインドセットから資本家に変えていき、マインドセットが入れ替わったときに資本家へシフトしていくのが良いのではないでしょうか。
サラリーマンこそ、資本家マインドセットを持つ必要があると感じさせてくれる、非常におすすめの一冊です。