【書評】超入門 資本論|木暮太一[要約・感想]

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「給料が上がれば、いろいろなものを買えるし、生活がもっと豊かになる。」

「給料が低いから、生活が貧しい」

など、給料さえ上がれば、人生が良くなると感じる人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、一般的に勝ち組の目安に上げられる「年収1,000万円」の人たちが感じていることは、「この仕事内容で、この給料は割りに合わない」「しんどい」ということだそうです。

木暮太一さんは、なぜこうした現象が起きるかというと、

ぼくらが生きている、この社会のルールに気づいていないからです。そのルールに気づいていないために、知らない間に”負け”ているのです。1000万円稼いでいても、”負け”てしまっているのです。

と言います。

 

私たちは、スポーツやゲームをやる前にルールを確認するのにも関わらず、自分の人生や仕事のルールを確認せず社会に出てしまっているのです。

私たちが生きる日本やほとんどの先進国は、資本主義社会であり、そのルールは「経済学」から読み取ることができると言います。

そして、その「経済学」のルールを最も的確に示しているのが、カール・マルクスが唱えた『資本論』です。

『資本論』は非常に難解な経済書ですが、わかりやすく纏めた木暮太一さんの『超入門 資本論』をご紹介いたします。

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超入門 資本論|木暮太一

超入門 資本論|木暮太一

木暮太一さんの『超入門 資本論』は、カール・マルクスが説いた『資本論』を2時間で読めるように纏まった超入門版です。

経済学部出身の人であれば、『資本論』を読んだという人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は名前を聞いたことがある程度のものだと思います。

『資本論』は、150年以上前に書かれていますが、今私たちが生きる資本主義社会、日本社会の絶対ルールが書かれています。

難解な『資本論』を読むことはできなくても、本書を読めば、私たちが生きる社会のルールを知ることができ、どうすれば幸せに生きていくことができるのかを学ぶことができます。

お金と働き方の絶対ルールを知る者だけが勝つ!

この世を牛耳る資本主義のルールを解き明かした

マルクスの名著に学ぶ、それでも勝ち残りたい人のための戦い方。

教養として知っておきたい最重要経済書を2時間で読む超入門書。

Amazon より

 

本書は、次のような方にオススメです。

icon-check-square-o 給料が少ないと感じる、もっと給料が欲しい、生活がしんどい方
icon-check-square-o 給料の決まり方を知りたい方
icon-check-square-o 今の働き方に不満がある方
icon-check-square-o マルクスの『資本論』で何が書かれているか知りたい方、もしくは復習したい方
icon-check-square-o 会社に雇われて働いている方

 

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『資本論』の3つのエッセンス

木暮太一さんは、カール・マルクスが書いた『資本論』は次の3つのエッセンスに纏められると言います。

超入門 資本論』の前半では、この3つのエッセンスを解説し、後半では資本主義のルールの中で、『資本論』を活用しながら、私たちがどう戦い、生き抜くべきかを解説してくれています。

ポイント①「価値」と「使用価値」の意味を理解し、その区別をすること

ポイント②「剰余価値」の意味を理解し、それが生まれるプロセスを知ること

ポイント③「剰余価値」が、やがて減っていくことを理解すること

『資本論』の3つのエッセンス

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「価値」と「使用価値」

働いても働いても、豊かな人生を手に入れられないと思う人が圧倒的に多数ではないでしょうか。

ニュースで毎日株価の情報が流され、景気が良い時もあれば、景気が悪い時もありましたが、日本人の給料の額はこの数十年緩やかな下降線を描いています。

なぜ株価上がっても給料は上がらないのかの答えは、「商品の価格の決まり方」を理解する必要があると言います。

 

木暮太一さんは、「資本論」の中で重要な理論として、次の二つを上げています。

①商品には、「価値」と「使用価値」がある

②需要と供給のバランスがとれている場合、商品の値段は「価値」通りに決まる

 

「使用価値」

まず、理解しやすい「使用価値」について説明します。

「使用価値」とは、「使って感じる価値」という意味で、それを「使うメリット」のことです。つまり「使用価値がある」とは、「それを使ったらメリットがある、満足する、有意義である」という意味になります。

例えば、パンの使用価値は、「美味しい」「空腹が満たされる」などがあげられます。

iPhoneの使用価値は、「カメラが使える」「マップが見れる」「インターネットが使える」「SNSが使える」など無数に出てくるはずです。

私たちは、普段「価値」という言葉を使う時、無意識に「使用価値」の意味で使っているのです。

 

「価値」

一方で、『資本論』の中での「価値」という言葉には注意が必要です。

「価値」という言葉は、「労力の大きさ」という意味で使われています。つまり、「その商品の価値が大きい=その商品をつくるのに多くの労力がかかっている」ということを言っているのです。「それをつくるのにどれだけ手間がかかったか」を計る尺度なのです。

つまり1時間で作ったパンよりも、10時間かけて作ったパンの方が価値が大きいということになります。

 

バカラのグラスは10万円以上しますが、私たちが普段使う「価値」(「使用価値」の意味)という言葉で考えると、飲み物を飲むことに使うと考えます。

しかし、『資本論』に書いてある「価値」で考えると、職人が丹念に作り上げて労力がかかっているから、価値があると考えられるのです。

人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点|小暮太一 iPhone バカラ

マルクスは、「商品には、”価値”と”使用価値”がある」と言っており、片方しかなければそのモノは「商品」にならないと言っています。

 

商品の値段は、「価値」で決まる

マルクスは、商品の値段を決めているのは、「価値」だと考えています。

意外かもしれませんが、作るまでにどれだけ労力がかかっているかが、値段を決めているのです。

3日間煮込んだカレーと、30分で作ったカレーがあったときに、3日間煮込んだカレーの方が値段は高くなります。

 

注意が必要なのは、価値は「社会平均」で決まるということです。

・この商品をつくるには、通常これくらいの労力がかかる

・この商品の原材料は、一般的にこれくらいの量が必要

なので、社会平均で10時間で作れるものを、1000時間かけて作ったとしても、それは高く売ることはできません。

 

価格の相場は「価値」が決め、そこから上下させるのが「使用価値」

価格の相場は、それまでにかかった労力である「価値」が作りますが、「使用価値」が全く関係ないわけではありません。

相場をつくるのはあくまでも「価値」、

そして、その基準から値段を上下させるのが「使用価値」です。

どれだけ使用価値が高くても、紙コップが10万円を超えることはないですし、使用価値が低いジェット機があっても10万円になることはありません。

「価値」が値段の基準を作り、そこから「使用価値」によって多少値段が変わるのです。

 

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給料の決まり方

マルクスは、取引するものは全て「商品」であると説いています。

取引されるものが「商品」であるなら、私たちの労働力も「商品」だということができます。

労働という「使用価値」を、企業が買い取るという取引をしているのです。

しかし、給料は「使用価値」で決まっているのでしょうか。

 

「労働力の値段」、つまり給料も、商品の値段と同じように決まっていると考えることができます。

価格の相場を作っているのは、商品がどれだけ労力がかかって作られたかの「価値」で決まると説明しました。

みなさんの給料を決めているのは、「みなさんの労働力をつくるために必要な要素の合計」と考えられるのです。

商品の価値は、商品を生産するのに必要な要素の合計です。つまりこれは、その商品の「生産コスト」です。同じように、労働力の価値も、労働力の「生産コスト」で決まるというわけです。

 

それでは、労働力を作るための必要な生産コストとは何になるのでしょうか。

人間が働くには、 その仕事をする体力と知力(知識・経験)が必要です。労働者に体力と知力がなければ働いてもらうことができません。

体力を回復させるための食費や寝るための住居費、衣服費などが生産コストにあたります。

その業界で働くための知力として、研修費や学費、勉強時間なども生産コストにあたると言います。

つまり、肉体労働などで体力的にきつい仕事が給料が高くなるのは、生産コストが高くなるため給料が高くなるのです。

労働の価値

 

商品の価値が「社会平均」で決まっていたように、労働の価値も「社会平均」で決まります。

つまり、「私はタワーマンションに住まないと働けない!」「ブランド品をたくさん買わないと無理!」と言ったことは通用しないのです。

その証拠に、給与明細を見れば、通勤手当、住宅手当、家族手当、資格手当など、さまざまな手当があります。

手当は「それだけ必要な精神的エネルギーが増えますね。その分手当を払います。」という社会平均的な負担分が手当として支払われているのです。

 

結果を出しても給料は上がらない

ここまでの話が理解できると、なぜ会社で頑張って仕事をして、結果を出しているのに給料が上がらないかがお分かりいただけると思います。

商品の値段を決めているのは「価値」であり、「使用価値」はその相場から値段を上下させるだけなのです。

なので、労働においてもあくまで給料のベースは「価値」であり、仕事上の能力の高さである「使用価値」は多少の給料を上下させるだけなのです。

その証拠に、厚生労働省が発表する「賃金事情等総合調査」を見ると、日本の企業全体の平均で基本給の中で業績や成果を反映しているのは3.3%という結果が出ています。業種によって若干異なりますが、ほとんどの業種は数%のみで、全く反映しない業界もたくさんあることがわかります。

3.3%しか違わないということは、自分の給料が20万円だとして、同期で最も優秀な人が20万6000円、同期で最も成果が上がらない人が、19万4000円になるだけです。

厚生労働省|令和元年賃金事情調査

労働者は、労働力を再生産するため(明日も働くため)に、必要なお金を給料としてもらっていることがわかります。

すると、給料日が近くなる頃には、給料の大半を使い切ってしまうことも普通であることがわかると思います。

 

先輩社員の方が給料が高いということは普通ですが、なぜそうなるかというと、家族ができたり、家を買ったり、車を買ったり、子供が進学したりと、必要な経費が増えるから給料が上がっているのです。

つまり、生活費が高いから給料が高いのであって、仕事が出来るからという理由ではないのです。

冒頭に年収1000万円でも生活がしんどい人がたくさんいるということを書きましたが、それも当たり前で、年収1000万円の人は生活費が1000万円かかるから、年収1000万円をもらっているのです。

マルクスは、「賃金を決定する際の、これだけは外せない最低限の基準は、労働期間中の労働者の生活が維持できることと、労働者が家族を扶養でき、労働者という種族が死に絶えないことに置かれる」(『経済学・哲学草稿』第一草稿・一.賃金)という言葉を残しています。 「アダム・スミスによれば、ただの人間として生きていくこと、つまり、家畜並みの生存に見合う最低線に抑えられている」とも言っています。(同)

 

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まとめ

木暮太一さんの『超入門 資本論』から、「価値」と「使用価値」についての箇所を中心にご紹介してきました。

本書の中では、『資本論』の残りの重要なエッセンスである「剰余価値」、「剰余価値」が減少していくジレンマなどについても解説されており、それが私たちの生活とどのように関わっているかについてもわかりやすく書かれています。

そして、こうしたいつまで経っても苦しい生活を強いられる労働者がいかにして、勝ち抜けば良いかの解決策を教えてくれる一冊です。

 

私たちの多くの人たちの生活が、いつになっても豊かにならない根本的な原因は、150年以上も前に解明されていたことに驚きを感じます。

しかし、いまだに150年前のルールが現代にも適用されていますが、ほとんどの人たちは150年間ルールを知らないまま生活をしてきたのです。

AIやテクノロジーが人々の仕事を奪うということが声高に叫ばれていますが、それも後半部分の剰余価値の概念が理解できれば、何が起こるかを想定することができます。

マルクスが書いた『資本論』を読むことができなくても、本書を読んで私たちの生きる時代のルールを改めて確認することができるため、是非お手にとっていただきたい一冊です。

 

木暮太一さんが、『資本論』から読み取った内容を、私たちの働き方や給料により特化した内容で書かれた『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』も、とてもおすすめです。『超入門 資本論』は、あくまでも『資本論』の解説ですが、『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』はより私たちの働き方などに落とし込んで書いてくれています。

 

より社会のルールを知りたいという方は、森岡毅さんの『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』もおすすめです。P&G、USJで大活躍した超エリートサラリーマンの森岡毅さんが、愛する自分の子どもたちに送ったキャリアのアドバイスが詰まった話題作です。超エリートサラリーマンが送ったアドバイスは、意外にもサラリーマン以外の道を示唆するものだったのです。

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