これから10年間で日本人の働き方が大きく変わると言われています。
今、20代の人も40代の人も、まだ小さな子供たちも避けては通れない本質的な変化であり、ほぼ全ての人に関係している問題です。
一生懸命勉強していい大学に進み、いい会社に入る。今はまだそういった成功パターンが残っています。その一方、もうそれだけでは安心できないと感じる人たちも増えています。「それよりも、もっと大事なこと」が見え始めているように、思えるからでしょう。では、いったいそれは何なのでしょう?これからの社会を生き抜くために、私たちに必要なものは何だというのでしょう?
今の日本社会、世界の変化に対して、私たちの働き方が今後どのように変化していくか、そして、どのように対応すべきなのかを、まとめた一冊をご紹介いたします。
未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる│ちきりん
ちきりんさんの『未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる』で、日本は、かつて世界中でどの国も経験していない少子高齢化の国になり、人口は減少し、国全体が緩やかに衰退を続けていると言います。
そんな中、世界では新たなテクノロジーが人々の生活や働き方を一変させ、アジアの発展途上国の人々が、どんどん世界の舞台で活躍するようになってきています。
何が正しい生き方で、何が正しい働き方かという答えはありませんが、これからの時代は政府や企業が決めたルールに黙って従うのではなく、一人ひとりが自分で自分の働き方や生き方を選んばなければなりません。
今の働き方以外、何も選択肢はないなどと、最初からあきらめてしまう必要もありません。私たちは今、自分なりの働き方を選べる時代に生きています。それは正規か非正規か、会社員かフリーランスかといった従来型の区分でもありません。もっと自由に考えることで、従来とは根本的に異なる新しい働き方が見つけられるはずなのです。
現在では20代、30代から老後の心配をしている人が多いですが、不安な未来をワクワクできる未来に変えていくためのヒント、そして答えが詰まったオススメのビジネス書です。
世界を変える3つの変化
これから、私たちの働き方が確実に変化していくことを世界に証明した1冊の本があります。
2012年出版された、ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏による『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』です。本書は世界的なベストセラーとなり、世界各国のビジネスパーソンの働き方が変わり、それは日本も例外ではないことを、はっきりと宣言し、世界に衝撃を与えました。
『ワーク・シフト』を読んでいる人の6割以上が、「現在起こりつつある変化は、産業革命期に匹敵するレベルの変化だ」と考えていたのです。さらに本を読んどいない人でさえ、3人に1人が、今の変化は産業革命期レベルの変化だと感じていました。
産業革命は、石炭を使った動力技術が実用化され、多くの手作業で作っていたもの、大規模工場が組立ラインに替わり、職人達は職を失い、工場労働者になりました。
同時に蒸気機関車や大型船で大量輸送が可能になり、市場は世界に広がり、地方農民達は都会の工場で働くという大変化が起こりました。
そして、多くの人達が、これから起きる変化は、産業革命以上の変化が起きると感じているのです。
パワーシフトその1|大組織から個人へ
ITの進化により、かつては国や大企業が圧倒的な力を持っていましたが、大きな組織から個人や個人が集まっただけのネットワークへと力がシフトしています。
UBERやAirbnbは、たった数年で各国の巨大企業を追い抜くような大発展を遂げていますが、これらの企業はどれもITを駆使し、個人が収入を得られるようなプラットフォームを提供することで、どの企業もなしえなかったような急激な成長を遂げています。そして、こうしたプットフォームを活用し、生計を立てる個人が多数生まれてきているのも事実です。
IT技術の進化は、国家や大組織の力を減じる一方、今の、そして未来のすべての個人に、自らの意思と選択によって、新しい可能性を追求できる機会を与えてくれています。自分が今、滅びゆく大組織側にいたとしても、それを嘆く必要はありません。
新しい時代に成功するチャンスは、技術の進化が続く限り、あとからくる個人にも、常に用意されているのです。
パワーシフトその2|先進国から新興国へ
グローバリゼーションと聞くと日本では迫り来る脅威として受け止められることが多いですが、ベトナムやタイ、インドなどの新興国では、これから世界で活躍できるポジティブな言葉に捉えられるということを、まず理解しなければなりません。
グローバリゼーションは、私たちがバカンスを楽しんでいる間に、海外から東京にいるのと同じ仕事をすることが出来る未来をもたらしてくれる可能性もありますが、同時に、日本向けの仕事も日本人が行う必要がなく、新興国の人々が行うという未来も訪れます。
今まで安泰と言われていたホワイトカラーの仕事も、丸ごと海外に移転させたり、アウトソーシングしてしまう企業も出てきており、日本人しかできない仕事というものは年々減少してきています。
パワーシフトその3|ストックからフローへ
IT革命、グローバリゼーション、そして私たちの働き方に大きな影響を与えるのが、人生の長期化です。
先進国の人たちの寿命は、1日5時間ずつ延びていると言われており、2050年の日本人の平均寿命は100歳にも達するという研究結果も多数出ています。寿命が100年になる時代に、60歳もしくは65歳で定年できると考える方があまりにも非現実的です。
多くの人が、老後に必要な資金を現職中に貯めるという考えしかないために、本屋に行けば「老後には〇千万円必要!」といった本がところ狭しと並びます。しかし、何歳まで生きるかわからない世の中で老後の資金を前もって決めることは、愚行であり、最も大事なことは会社の肩書きがなくても、自分の力で稼ぎ続けられることが出来る能力です。
ちきりんさんは、「これからはみんな、ストック型からフロー型にシフトしていく必要がある」と言います。
今後、人生100年の時代になれば、ストックが多いことより、その時々になんらかの価値を生み出し続ける「フローの力」の方が重要になります。たとえば、貯金はあるけれど自分で稼ぐ力のない人と、貯金はないけれど、自分で稼ぐ能力のある人の対比が、わかりやすいでしょう。
前者は長期間にわたり大企業で働いてきたような人です。毎月、給与が振り込まれ、年に二回はボーナスも出るし、退職金ももらえて、貯金もたっぷりもっています。けれど、長らく組織から給料をもらうだけだった人には、自分で稼ぐ力がありません。やってみればできるのかもしれませんが、いったいどうやれば(組織に所属せずに)お金を稼げるのか、想像もできないという人がいるのです。こういう人は人生が長くなると、いくら貯金があっても、毎月毎年それが減り続けるという不安に怯えながら暮らすことになります。
大企業を捨てる若者達の急増加
働き方が変わると言ってもなかなかピンとこない方も多い子も知れませんが、既に新しい働き方を求め、行動を起こし始めている人達が大勢いることも事実です。
社会が変わろうとしている中、従来通りの働き方を続けることに疑問をもつ人が増えています。「大学を出た直後に一流大学に就職し、一生転職をせず、じれいにしたがってひとつの企業で定年まで働く」という定番の成功コースを、敢えて選ばない若者も目立ち始めました。日本を代表する大企業が、長年会社のために忠誠を尽くしてきた働き盛りの社員をリストラする時代では、それも当然なのかもしれません。
今までは企業を途中で退職するような人は、落ちこぼれや変わり者と見られていましたが、今や未来を考えている高学歴で、有名企業の若者ほど会社を何の躊躇もなく辞めていきます。そうした若者達は、キャリアアップのための転職のみならず、起業やフリーランスとして大企業の看板に頼らず自力で人生を切り開くという選択をしています。
ちきりんさんは、こうした大企業を数年で辞める若者を、「時代の先駆者」かもしれない予見しています。
まとめ
今まで社会の変化や世界のパワーバランスの変化など経済などに全く関心がなかったという方にもわかりやすく、今世界で起きている変化、そしてこれから起きてくる変化について、わかりやすく解説されています。
後半では、そうした変化に対応するには、どのような行動をしていけばいいかといった具体的な対応策も述べられており、社会で働く全ての人、そして、特にこれから何十年も社会で働いていく、20代、30代のビジネスパーソンの必読書です。

